3回にわたって新刊JPニュースでお送りしている、3人の人気作家、大沢在昌さん、京極夏彦さん、宮部みゆきさんによる朗読会「リーディングカンパニー」特集

 最終回となる今回はインタビュー後編ということで、朗読との関わりや、小説を書くことと朗読をすること、そして朗読の魅力などについて語って頂いた。このインタビューでは『らんぼう』をはじめ、3人の様々な作品名が出ているが、気になったら是非読んでみて欲しい。

インタビュー前半はこちらから!

 ◇   ◇   ◇

―皆さんが初めて「朗読」をしたのはいつのことですか?

大沢 「僕はこの『リーディングカンパニー』が初めてですね」

宮部 「私は高校時代、放送部で朗読していました。安倍公房とかを読んでましたね」

大沢・京極 「へぇ〜!」

宮部 「だから、会社が株式になって、年1回に何かお祭りをやろうという話になったとき、朗読をやりたいって言ったんです(笑)。私、白石加代子さんの『百物語』の大ファンで、憧れていたんですよ」

―京極さんはいかがですか?

京極 「ナレーションだの声優だの、さかのぼれば教科書の音読だとか(笑)そういうのを勘定に入れるのかどうかですが、お客さんの前で読むのはこの朗読会が初めてですね」

大沢 「今は結構こういう朗読会が増えてきましたけど、私たちが始めた頃は、まだそんなになかったんですよね。阿刀田高さんの朗読会(「朗読21」)などはありましたけど…」

宮部 「阿刀田先生が主催されている朗読会は、本当に本格的ですよね。鴨下信一さんが演出していらして。私たちの朗読会は文化祭のノリですから(笑)。それぞれ自分で意見を出して、『ここでこんな音が欲しい!』って要望を出したりね」

大沢 「でも、手作りだけれども、すごく人材は豊富だと思いますよ。スタッフに恵まれていると思います」

―この朗読会も来年はいよいよ10周年を迎えますが、それに向けた企画は既に進んでいらっしゃるのでしょうか。

宮部 「今回の朗読会で、再演して欲しい演目についてアンケートをとりまして、ご希望があればその演目をやらせて頂こうと企んでいます。でも何が来るんだろう。テンションが上がるものが来ますかね。『南極(人)』とか『らんぼう』とか」

大沢 「この朗読会で一番多くやっているのが、僕が書いている『らんぼう』っていう刑事アクションのシリーズなんです。で、『ウラ』(大浦)と『イケ』(赤池)というコンビが主人公なんですが、僕が『ウラ』で、彼(京極さん)が『イケ』を演じていて」

京極 「演じさせられている、ですね正確には」

大沢 「僕の中では、『ウラ』と『イケ』のキャラは変わっていないんですよ」

京極 「いや、変わってると思いますけどねえ」

大沢 「でも、京極さんに言わせると、僕が演じている『ウラ』はどんどん思慮深くなっていって、彼(京極さん)が演じている方はどんどんバカになっているじゃないか、と」

京極 「どんどん(『イケ』が)卑猥な人になっているんですよ(笑)!」

宮部 「最初は同じようなキャラクターだったんですけど、朗読会の後に書き下ろしのシリーズ新作とか出ていきますよね。すると、『ウラ』さんがどんどんカッコ良くなっていくんですよ。で、『イケ』さんはどんどんスケベになっていく(笑)」

大沢 「“早くソープ行こうぜ”とか言うわけですよ(笑)」

京極 「ひどいセリフは全部(僕に)まわしてきますよねえ」

宮部 「(京極さんが)いろいろ言わされているよね(笑)」

―朗読会が作品に影響を及ぼしているわけですね(笑)

京極 「小説家って基本的に、一人で仕事をするんです。編集者のサポートはあっても、書くのは常に一人。でも、この朗読会は一人じゃできません。普段の仕事とはまるで違う、小説家としては非日常的な仕事なんですね」

大沢 「それに、こうやって3人揃ってリハーサルしてるでしょ? そして明日も3人一緒に1日ずっといる。実はそういう機会ってあまりないんですよね。仕事はそれぞれの場所でやっていますから」

京極 「3人が揃うことって、年に何回もないですよね」

大沢 「そういう意味では、この朗読会は僕ら3人だけじゃなくて、大沢オフィス全員の絆をグッと結びつける、そういう意義はあるのかなと思いますね」

宮部 「スタッフの皆さんは細かいところまで気を配っていて、私たちが見えないところでいろいろなことしています。で、どんどんスキルを積んで、作業も手早くなっていますね(笑)」

京極 「緞帳の上げ下ろしをしている人は、普段『はい、大沢オフィスです!』と電話に出ているスタッフなんです。その人が時間をキッチリ測って、緞帳の上げ下ろしをしているという(笑)」

―では最後に、朗読の魅力についてお聞かせ頂けないでしょうか。

京極 「僕ら小説家は言葉を使うのが仕事です。言葉を組み合わせてお金をもらっているわけですね。小説は文字のつながりだけで表現しなきゃいけない。それは音が鳴らないんだけれども、文章を読む人は頭の中で音として再生しているわけですね。ですから、読んで心地よい文章というのは音読しても心地よい。泉鏡花なんかは音読にも気をつかったそうですが、きれいな文章は音に出してもきれいなはずなんです。でも、書いている時は意味を優先しがちで、音の響きは忘れがちになるもんで。だから声に出して読んでみると『下手だな』とか『ダメだな』というのが分かる」

宮部 「なんか、ぎくしゃくしているなあ、とかね」

京極 「余計なセンテンスがあるとか。校正の方もそこはスルーですから、疎かにしがちなんですよ。『これではいかんな』とつくづく思いますね。それから、もし朗読を聴かれて、何か感じられたなら、ぜひ本を読んでみて欲しいですね。視覚言語と聴覚言語の差を確かめていただきたい。この朗読会は、読むことに親しんでいただきたいという気持ちがあって始めたものですから、本屋さんに足を運んで頂いて、自分の目で見て、声に出して読んで頂きたいな、と」

大沢 「それも面白いよね、自分で読んでみるって」

京極 「ええ。これ、あくまで小説や本に親しんでもらおうといイベントですからね。別にウサ晴らしでやっているわけじゃないんですよ(笑)」

宮部 「でも、私はやっぱりコスプレが楽しいな(笑)」

―お忙しいところ、ありがとうございました!

 ◇   ◇   ◇

いよいよ10年目を迎える来年の開催日が発表されているので、こちらもチェックだ。

◆「リーディングカンパニー vol.10」
日時:2011年10月29日(土曜日)
会場:光が丘「IMAホール」

◆プロフィール
大沢在昌さん
 1956年 愛知県名古屋市出身。慶応義塾大学中退。1979年、第1回小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞し、デビュー。1994年「無間人形 新宿鮫4」で第110回直木賞。さらに今年、日本ミステリー文学大賞を受賞するなど、日本ミステリー文学の重鎮的な存在となっている。

京極夏彦さん
 北海道小樽市出身。桑沢デザイン研究所を経て、広告代理店等に勤務の後、制作プロダクションを設立。アートディレクターとして、現在でもデザイン・装丁を手掛ける。1994年、「姑獲鳥の夏」でデビュー。2004年に「後巷説百物語」で第130回直木賞受賞

宮部みゆきさん
 東京都出身。東京都立墨田川高校卒業。法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。1999年、「理由」で第120回直木賞。2007年 「名もなき毒」で第41回吉川英治文学賞受賞。

(新刊JP編集部/金井元貴)


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