ジュンク堂書店新宿店 阪根正行さんに聞く『これだけは読んでおきたいSF小説』
世の中にはあんな本やこんな本、いろんな本がある。そのテーマも十人十色。「感動したい本が読みたい!」「思いっきり怖い本を味わいたい」と思っても、 どんな本を選べばいいのか分からない! とお悩みの方も多いはずでは?
 そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のソムリエ、コンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
 そんな彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが毎週水曜日に配信する、この「わたしの3冊」だ。【「わたしの3冊」バックナンバーはこちらから】

 11月のテーマは『これだけは読んでおきたいSF小説』。
 今回は先週の紀伊國屋書店新宿本店に続いて新宿の書店から、ジュンク堂書店新宿店の阪根正行さんに登場してもらった。


◆『散歩する侵略者』

著者:前川知大
出版社:メディアファクトリー
定価(税込み):1400円

 SFとは一種の思考実験であり、SF作家とは最も誠実に思考する小説家だと言える。そこで今、私が最も注目しているのが前川知大である。SF作家というより劇団《イキウメ》の劇作家として知られ、芸術選奨新人賞を受賞するなど高い評価を受けている。本書は、あえて「宇宙人の地球侵略」というSFの定番をモチーフにしているが、そのモチーフ自体を手玉にとって崩していく描写がユニークで、前川氏の切れ味鋭い「思考」の片鱗がうかがわれる。そして、人間って何? 夫婦って何? 家族って何? 生きるって何? とあまりにも当たり前過ぎて普段考えないことが切実な問題として次々と浮上してくる。本書のみならず演劇作品も合わせてオススメする。

◆『オブ・ザ・ベースボール』


著者:円城塔
出版社:文藝春秋
定価(税込み):1200円

 著者は、先日『烏有此譚』で野間文芸新人賞を受賞した注目の作家。もともと物理学の研究者だったというのも有名。本書はそんな著者のデビュー作。空から人が降ってくるとある町のレスキューチームを描いた物語。SFと言う以前に全くもってばかばかしいと一蹴したいところが、そうもできない。降ってくるのがいん石ではなく人だからレスキューチームは必要? 1年に1回落ちてくるから必要? 10年に1回なら不要? チームは24時間体制でスタンバイ?隊員のモチベーションの維持は? 経費は? と一つ一つの局面は非常に現実的でなんだかサンデル先生に「正義」とは何か?と問われているようでもある。だまされたと思って読んでみて欲しい。

◆『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』


著者:東浩紀
出版社:新潮社
定価(税込み):2100円
 
 著者は『クォンタム・ファミリーズ』で三島由紀夫賞を受賞した気鋭のSF作家。思想家、批評家から小説家への華麗なる転身を高く評価された。しかし、よくよく聞いてみると氏の読書体験は思想書よりもSF小説の方が先だったらしい。それを考慮すれば、氏の思想家としてのデビュー作かつ代表作である本書をSFと位置づけて読めるかもしれない。現代思想の雄、ジャック・デリダの脱構築哲学の解読を企図し、「私たちは〜」という著者特有の語りで読者をその深淵へ導いてゆく。私自身この10年で3回通読した。その都度、新たな味わいがあり、知識云々よりも、どんどん引き込まれていくスピード感がたまらない。これはまさしくSF小説である。

◇   ◇   ◇

【今回の書店】
ジュンク堂新宿店

住所:東京都新宿区新宿3-29-1 新宿三越アルコット6〜8F
TEL:03-5363-1300
FAX:03-5363-1301

■アクセス
JR新宿駅より徒歩3分ほど

■営業時間
AM11:00〜PM9:00

■ウェブサイト
http://www.junkudo.co.jp/


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