「うちの本棚」、第四十回はムロタニ・ツネ象によるダークファンタジー『地獄くん』を取り上げます。一般に『ゲゲゲの鬼太郎』の亜流という印象を持たれる本作ですが、そのテーマはよりディープです。

『地獄くん』は「サンコミックス」でもわりと初期の刊行になり長く巻末の刊行リストでタイトルが知られた作品である。一般に夏休みなどに向けてホラー系単行本が書店店頭に並ぶのに合わせて、この『地獄くん』も店頭に並んでいたように記憶するが、70年代後半には見かけることも少なくなり、80年代には古書価格が高騰していたと思う。実のところ初出時には読んでおらず、最初の単行本も友人が持っていたものをナナメ読みした程度で、キチンと読んだのはサンワイドコミックスで刊行されてからだった。そのためごく一般的なイメージでもある「『ゲゲゲの鬼太郎』の亜流」という印象を持っていたのだが、実のところその世界観はずいぶんと違っている。

まず地獄くんは妖怪退治はしない。というより、いわゆる妖怪の類が登場する作品ではない。地獄くんが現れ退治するのは「人間の悪」なのだ。

地獄くんが何ものなのか明確な説明はなされていないが、名前にもある通り地獄界からやって来るようだ。また鬼太郎の目玉おやじに対応するような「万年とっつぁん」という万年筆型の仲間もいる。もうひとつ、地獄くんの服のドクロボタンは相手に噛みついたり拳銃の弾丸を受け止めたりする。

この『地獄くん』は初出をご覧いただけるとわかると思うが、特定の掲載誌で連載されたものではない。登場が「少年サンデー」で、続けて2話連載されたあと、「中一時代」、そして「少年」へと掲載誌を渡り歩いたと見られる。最期の『死神工場の巻』は残念ながら未刊となっていて、朝日ソノラマ版では収録されなかった。

第5話となっている「地獄の声」は、地獄くんは一切登場しないのだが、発表時期が近く、地獄が登場することから、サンコミックスに収録する際「地獄くん」の一編としたのではないかと思える。
 
個人的にはムロタニ・ツネ象の作品は学習マンガを読んだ程度で、ほかに『カミナリ坊や ピッカリビー』『ファイトだ! ピュー太』などギャグ作品の作者としての知識がある程度なのだが、『地獄くん』『人形地獄』の2作品で怪奇系漫画家という印象が強い。

結果的に長期連載されなかったこと、「鬼太郎の亜流」的イメージが強かったことが『地獄くん』をマイナーな作品にしてしまったのかもしれない。

初出/スペア・タイヤの悲鳴(小学館「少年サンデー」・掲載号不明)
   地獄の片道切符(小学館「少年サンデー」・1967年1号〜7号)
   悪魔火(光文社「少年」・1967年12月号付録)
   一万円札の中(旺文社「中一時代」・掲載号不明)
   地獄の声(小学館「少年サンデー」・1967年24号〜27号)
   死神工場の巻(光文社「少年」・1968年2月号〜3月号)
書誌/朝日ソノラマ・サンコミックス
     〃   ・サンワイドコミックス(『人形地獄』併録)
   太田出版゜QJマンガ叢書

■ライター紹介
【猫目ユウ】

ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。

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