第8回開高健ノンフィクション賞受賞作『空白の五マイル』が上梓された。副題は「チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」。今回の受賞作は正真正銘の冒険譚だ。
 著者の角幡唯介は早稲田大学探検部出身で元朝日新聞の記者である。
 チベットの奥地、ツアンポー峡谷は7000メートル級の山岳地帯に深く刻まれた川である。19世紀末にインドの仕立て屋が初めて報告したこの峡谷は、100年あまりの間、全行程の踏破を許さない、いわば、地球最後の秘境であった。途中、中国のチベット侵攻、ダライ・ラマ逃亡などで外国人の立ち入りを許されなかったという事情もあり、1942年にイギリス人のプラントハンターが最後の五マイルを残して突破したものの、「空白の五マイル」が幾多の探検家の目標となっていた。角幡はここを制覇することを誓う。
 彼の挑戦は学生時代の2002年と仕事を辞めて挑んだ2009年の2回。どちらも単独行である。一度目は、現地に友人も出来、いいところまで迫る。しかし2回目は...。
 無謀であったと思う。よく生きて帰ってこられたと安堵もする。しかし、やはり冒険の物語は心が踊る。新しい作家の誕生に心からの拍手をおくりたい。

(東えりか)







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