あの人気作家が猫の着ぐるみを…? 笑いあり涙ありの朗読会をレポート
 同じ事務所(大沢オフィス)に所属し、公私ともに仲が良い3人の人気作家・大沢在昌さん、京極夏彦さん、宮部みゆきさん。その3人を中心に大沢オフィスが毎年主催しているのが、自作朗読会「リーディングカンパニー」だ。

 2002年より始まったこの朗読会も今年で9年目、そして来年には記念すべき10回目を迎える。作家さん自身の朗読、本当に上手なの?という声も聞こえてきそうだが、実はそれぞれ映画やアニメで声優経験もあり、お世辞ではなく抜群に上手なのだ。
 今回は11月6日、光が丘IMAホールで行われた「リーディングカンパニーVol.9」のレポートと、お三方揃ってのインタビューを3回に分けてお送りする。

インタビュー(前半)はこちらから!

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 私が今回参加したのは、昼夜2回公演のうちの夜の部。開場から開演までの間に大沢さんと京極さんが物販コーナーに立ち、自ら売り子をしながらファンとの交流を楽しむ姿が見られた。

 そして開演直前。IMAホールの客席のほとんどが3人のファンに埋め尽くされた。男女問わず幅広い年齢層の客が集まっていたが、意外だったのが若い女性が多かったこと。おそらく、2006年に公開された映画『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』で大沢さんの声に惚れてしまった女性ファンが、リピーターになっているのだろうと勝手に推測。

 演目は第一部と第二部に分かれており、第一部ではそれぞれが自作の短編を朗読、第二部では3人の共演で宮部さんの「お文の影」が朗読された。

 第一部のトップバッターは大沢さん。演目は「Wednesday」。これは1989年に刊行された短編集『六本木を一ダース』(河出書房新社/刊)に所収されているもので、なんと大沢さんの20代の頃の作品なんだとか。
 30代の画家と20代の女性の恋の模様を1シーンで描いたものだが、見せ場は、やはりクライマックスで大沢さんが叫ぶように言った「愛している」というセリフ。大沢さんのハードボイルドなイメージとは全く違った甘いセリフに、大沢さんのファンも大満足だったに違いない。

 続いては京極さんがステージに。“墓場系”を自称する京極さんが朗読をするのは、今年3月に出版された『冥談』(メディアファクトリー/刊)に所収されている「予感」だ。
 語り部と「谷崎さん」という廃屋の住人の2役だけで構成される本作だが、京極さんは“レインボーボイス”と言われる声色を上手く使い分けながら、冷たく張り詰めた緊張感を醸し出す。
 「予感」は『冥談』の中でもとりわけ怖い作品だが、京極さんの“演出”はその怖さをさらに倍増させた。特に、最後の「予感がするんですよ」という言葉のまくし立ては圧巻。朗読が終わった瞬間、会場はその恐怖感からか静けさだけが残った。

 第一部のトリを飾るのは宮部さん。演目は10月に文庫化したばかりの絵本『ぱんぷくりん』(PHP研究所)から「招き猫の肩こり」
 幕が上がると、ステージには京極さんの朗読によって張り詰めた緊張を一気にほぐしてくれるかのごとく、赤色の猫の着ぐるみを着た宮部さんの姿があった。客席からは笑い声。このメリハリ、3者がそれぞれ異なる分野を得意としているからこそのものだ。
 「招き猫の肩こり」は肩がこってしまった日本中の招き猫が温泉に向かうというお話。途中、閻魔大王役で大沢さんが参加したり(昼公演は京極さんが声をあてたそうだ)、アドリブをまぶすなど、終始和やかな空気が会場を包んでいた。また、スクリーンには黒鉄ヒロシさんの招き猫たちの愉快な絵が映り、観客を楽しませていた。

 休憩を挟んだ第2部では、3人の共演演目である「お文の影」(単行本未収録)が披露された。前日行ったインタビューで、宮部さんが「私、今回すごく心配なの。本当に陰惨な話だから」と心配してしまうくらい残酷で、そして最後にはしっかりと泣かせる作品だ。



 例年、この3人の共演演目は笑いを入れる物語を選んでいたが、今年は「10周年を前に1度、泣いて頂こう」(宮部さん)ということでこの「お文の影」が選ばれたそう。しっとりと聞かせる3人の語りに、客席は聞き入っていた。

 朗読会の締めくくりは3人によるフリートークだ。話の中心は今回の朗読会の演目だったが、特に「Wednesday」を読んだ大沢さんが、宮部・京極両氏に「韓流スターみたい!」「嫌と言ってたわりには・・・」とつっこまれ、少し慌てる姿が新鮮だった。

 この朗読会はチャリティーで行われているそうで、チケット代は会場代などの諸経費を除いて全て寄付しているそうだ。
 この「リーディングカンパニー」、来年はいよいよ10年目を迎えるが、どのような気持ちで小説家は朗読と向き合っているのか。明日から新刊JPニュースで配信する中編・後編では、3人揃ってのインタビューを配信するので乞うご期待!

インタビュー(前半)はこちらから!
(新刊JP編集部/金井元貴)


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