.jpドメインを国際的な水準まで値下げする方法についてのご提案

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今回は熊谷正寿さんのブログ『【クマガイコム】GMOインターネット社長 熊谷正寿のブログ』からご寄稿いただきました。

.jpドメインを国際的な水準まで値下げする方法についてのご提案
先日の公開質問*1 に対して、11月1日、株式会社日本レジストリサービス(以下JPRS)の東田社長からお返事をいただきました。*2

*1:「株式会社日本レジストリサービスさんへの公開質問です」
http://getnews.jp/archives/83424

*2:「GMOインターネット株式会社熊谷正寿会長のブログに掲載された記事へのコメント」
http://getnews.jp/archives/84401

何度も読み返しました。

しかしながら、「JPRSという独占企業は競争がない。よって、コストが非常に高く、それが理由で日本人は大変割高に.jpドメインを買わされている」という僕の不安や疑問は消えませんでした。

東田社長、そして多くの皆さん、インターネットの未来のためにぜひご一読いただきご意見をお聞かせください。

東田社長、早速のご返答ありがとうございます。

ブログは公開してから6日間で、3万4182人の方にご覧いただきました。また、『Twitter』を通じて928件のご意見をいただきました。

あまりの反響の大きさに、.jpに対する、みなさまの期待や関心を肌身で感じています。

・日本の.jpドメインは世界で最も普及している国別ドメインの5倍以上の値段
・ドイツのドメイン.de 登録数は1400万件。日本の10倍以上
・国別ドメイン登録ランキングで日本は16位。人口や経済力から比べて明らかに少ない

私はこの状況を日本のインターネットの未来のために、何としても解決したいと思っています。結論、解決策として以下の方法を提案します。

(1)フランスやオーストラリアのように定期的な入札を行い、.jpの管理運営者の選定を行う

もしくは、

(2)ドイツやイギリスのように非営利団体に、.jpの管理運営者を移す

その上で、

(3)完全に独立した第三者機関により管理運営者の監督を行う

以上の方法であれば、.jpの管理運営は公共性・公平性・透明性が担保され、入札という競争環境もしくは、非営利団体による運営で.jpは適正かつ国際的に競争力のある価格になり、日本のインターネットの普及にさらに貢献するでしょう。

詳細につきましては、以下の通りです。

東田社長よりのご回答を引用しながらの回答及び一部ご質問をさせていただくことをお許しください。

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JPRSの東田です。

熊谷会長のJPRSに対するご意見は、会社経営者としてだけでなく、日本におけるドメイン名最大手事業者、JPRS株主企業という枠も超えた、日本のインターネット社会の将来を真剣に考えたものであると感じました。
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>ありがとうございます。この機会に日本のインターネットの未来のために、有意義な意見交換をさせていただければ幸いです。

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私も、JPRS設立からの10年間、同じように、インターネット社会の将来のことをだれよりもという意気込みで取り組んできました。熊谷会長がご懸念されている点などに対して、私としての考えを述べさせていただきます。

▼JPRSという企業と.jpのレジストリ業務について

JPRSは、純粋な民間企業です。時々、省庁からの天下りを受け入れているのではないかという誤解を受けることがあるのですが、そのようなことはありません。 また、政府の保護を受けているという誤解もありますが、JPRSは政府に監視される立場であり、一切の特別な保護は受けていません。
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>おっしゃるとおり純粋な民間企業です。しかし、入札という公平・公正な手段を経ずに.jpを国から委譲承認(Delegation)されて運営されています。東田社長に質問ですが、具体的に“政府からの監視”というのはどのような内容ですか?

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JPRSの株主は、日本のインターネット基盤を支えるという趣旨に賛同いただいた、日本を代表する企業の方々になっていただきました。 GMOさんもその1社です。
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>ご評価いただき感謝いたします。しかしながら、私どもは、JPRS様からいただいた下記の増資趣意書に書かれていた「JPドメインの普及のために我々と協調できるレジストリ事業」という趣旨に賛同し、出資をさせていただいたつもりです。その後も.jpの国内最大の販売会社として、.jpの普及に最も貢献してきたと自負しております。

「当社は平成12年12月26日、JPドメイン名の登録管理業務を行う会社として設立されました。以来、ネットワークの根幹を支える情報基盤サービスの提供企業として国内外の組織と協調・協力を維持しつつ、JPドメイン名の登録管理やドメインネームシステム(DNS)の運用などを通じ、インターネットの発展と、人と社会の豊かな未来を築くことに貢献すべく努力いたしております。
当社は、更なる経営の安定化と財務基盤の強化を図り、上記の目的を達成するため、第三者割当による新株式発行に関し、下記のとおり行う予定であります」
(増資趣意書より抜粋)


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JPRSの利益が利用者に還元されず、役員をはじめとする株主にばかり還元されているというご意見は正しくありません。 株主への配当は、株式会社の経営としては当然の行為ですが、配当額は一般的な水準の域を出るものではないと考えています。 JPRSの株主は、株式配当を目的に株主となっていただいているのではなく、JPRSという企業を支えることの意義をご理解いただいているものと思っております。 また、後述するように、.jpの料金値下げという形で利用者への利益の還元努力を続けています。
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>その通りだと思います。決してそのことが悪いとは言っておりません。しかしながら、優先順位としては、国際競争力のある価格で提供できるだけのコスト構造の変革、利用者への利益還元、さらに利益が出れば配当という順ではないでしょうか?

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社長である私をはじめ、役員が株主となっていることも事実ですが、役員が自社の株式を保有することは一般的に行われていることであると考えています。
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>一般論としてはよく理解できます。

しかしながら、国の共有財産である.jpを取り扱う運営者が入札で行われなかったことや、役員の方々が個人で株式を取得された経緯(JPNICからJPRSへの移行)が公開されていないことは、公共性・公平性・透明性に欠けていると思っています。

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独占事業を営んでいると言われることも多くあります。 確かに、.jpのレジストリは当社1社ですが、トップレベルドメインのレジストリがドメイン名の一意性を保証するためには一元管理を行う必要があり、レジストリは必然的に1社となります。

しかし、このことはいわゆる“市場の独占”とはまったく別のことです。
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>各トップレベルドメインにレジストリが1社しか存在しえないことは理解しています。

だからこそ公平性を保つために主な先進国では非営利団体が運営しています。また、フランスやオーストラリアでは定期的な入札が行われています。このように公正な競争が効く環境であれば“市場の独占”にはあたらないでしょう。日本のように入札があったわけでもなく、公正な競争もなく、日本政府からの無期限の委譲承認(Delegation)による.jpのレジストリ事業は“市場の独占”にあたるのではないでしょうか?

仮に私どもが「JPRSさんは競合事業をやっているので別の会社に代えたい」と考えても代替がききません。これを“独占による優越的地位”というのではないでしょうか?

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日本のドメイン名市場は.jpだけで成り立っているわけではなく、gTLDも含めた他のトップレベルドメインとの共存と競争の中にあります。 日本のドメイン名市場には、それぞれ特徴のあるトップレベルドメインが提供され、利用者の皆さまはそこからそれぞれのニーズに合うドメイン名を選んでいただくことができます。日本で登録されているドメイン名のうちで、.jpが占める割合は半数を下回ると推測しています。
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>.jpの占める割合が低い一番の要因は価格が高いことです。これはJPRS様とのミーティングでも共有させていただきましたが、弊社内で行ったテストマーケティングの結果でも明らかです。
オランダでは人口1000人当たりのccTLDドメイン登録数が194件、対して日本はたったの8件という状況をどのようにお考えでしょうか?

また、ccTLDとgTLDの共存とおっしゃいますが、JPRS様に.jpの管理が移管された際に、郵政省からIANAに対して送られた書簡の中では、
「JPRS has been established against a backdrop of sweeping changes to the environment surrounding the .jp top level domain such as rapid Internet development and the intensification of competition within Japan between the .jp top level domain and gTLDs such as.com.」
つまり、そもそもJPRS様はgTLDをjpの競合と認識し、.jpの成長を促進するために設立された会社であると明示されています。

この度発表されたgTLDの取次ぎは、当初の設立経緯に反しているとはいえないでしょうか?

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現に、GMOさんにおいても多くの種類のトップレベルドメインを登録することができます。
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>私どもはレジストラ(販売事業者)なので多くの種類のドメインを扱うのはお客様の利便性を鑑みれば当然です。

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その中で、他のトップレベルドメインとは違う、独自の価値を提供することが、.jpに求められている存在意義であると考えています。

毎年行われているマカフィー社によるトップレベルドメインの安全性調査で、.jpが2年連続で最も安全な国別トップレベルドメインと評価されたことは、JPRSの取り組みだけでなく、事業者、利用者の皆さまの協力があってのものですが、.jpのこのような評価も、.jpの価値であると考えています。
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>これについては大変すばらしいことだと思っています。.jpの価格と人口あたりの登録数が先進国のccTLDやgTLDと同じ水準で、且つ安全性が高ければ、本当にすばらしい結果だといえるでしょう。

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JPRSが.jpのレジストリとしての基本的な柱としている考え方は、

- 技術力とシステム整備によるDNS運用の信頼性
- 障害、事故、災害に強い持続性のあるサービスの安定性
- 常に改善し続けるサービスの利便性
- 利用しやすい料金で提供する経済性

の4点であり、これらの取り組みのバランスを保つことが大切と考えています。

とかく料金ばかりが注目されがちですが、ドメイン名登録管理のサービスが継続して提供されなければならないこと、ドメイン名を利用するためのDNSが安定して運用されなければならないことなどを考えれば、安いことだけを追及することは、非常に危険だと思います。
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>おっしゃる通り、信頼性・安全性・利便性・経済性のすべてが重要だと思います。さらに付け加えるなら、国の共有財産を扱っているわけですから、公共性、公平性、透明性も非常に重要です。これらも“基本的な柱”に加えていただくことをご提案いたします。

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ドメイン名の登録管理には原資がかからないはずというご意見をいただくこともありますが、レジストリ業務ではDNSをはじめとする継続的なシステム投資が必要です。もしDNSに障害が発生すれば、.jpを利用したウェブへのアクセスや、メールの送受信などができなくなり、社会への影響は計りしれません。このことの重要性については皆さまもよくご理解いただいているものと思います。

もちろん投資が必要だから料金が高くてよい、というわけではありません。 汎用(はんよう)JPドメイン名の指定事業者向け卸値は、2001年のサービス開始当初は3500円でした。 これまで段階的に値下げを行い、2010年11月現在は2250円としています。
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>サービスの安定性、継続性という面では、gTLDや他国のccTLDにおいても、すべてのレジストリの皆さまが最も気を使われている点です。“.com”や“.net”、“.de”においても同様にシステムの安定性、継続性を維持するために多くの投資をされていますが、“.jp”と比較すると3分の1以下の価格で提供されています。この差はどこにあるとお考えでしょうか? システムの安定性に差があるとは考えにくいので、コスト構造に差があるのではないでしょうか。
上場企業においては大きな設備投資についても開示する必要があります。JPRS様でも、設備投資の内容や金額を詳細に公開されてはいかがでしょうか?

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これでもまだ、他国との比較では高めの料金水準にあることは事実です。料金を数百円引き下げることはその都度、数億円単位での減収となりますが、値下げについて継続して検討していく姿勢はこれまで同様変わりません。
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>弊社においても大幅な販売価格の値下げを行ってきましたが、結果としてドメイン名の登録数増につながり、日本のインターネットの発展のために微力ながら貢献できたと思っています。JPRS様も日本のインターネットのために“検討していく姿勢”だけではなく具体的なアクションをとられてはいかがですか?

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また、現在.jpの登録数が少ないことが日本のインターネット上の情報量に大きなマイナスとなっているというご意見ですが、日本では、大規模なブログサービスやショッピングモールサイトなどの、独自ドメイン名を利用しないポータルサイトがいち早く整備されており、ドメイン名の数が少ないからといって、ウェブの数やインターネット上の情報量が少ないということはないと考えます。
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>それは欧米諸国においても同様と考えています。しかしながら、欧米諸国におけるccTLDの普及と日本における.jpの普及の差にはこれだけでは説明し難い乖離(かいり)があります。また、ドメイン名の普及についても大幅な差があります。

お恥ずかしながら、「ポータルサイトがいち早く整備されており、ドメイン名の数が少ないからといって、ウェブの数やインターネット上の情報量が少ないということはない」ということについて定量的なデータを持っていません。これらを明示する具体的な資料をお持ちでしたら公表していただけませんか?

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▼gTLDの指定事業者への取次ぎについて

JPRSがgTLDを指定事業者の皆さまに取次ぐことを検討していることについては、10月14日と19日に開催した、指定事業者の皆さまを対象としたパートナーズミーティングの場で、ご相談させていただきました。

これについては、ご懸念の声もいただくことがありましたが、ぜひ取り組んで欲しいという強いご要望もいただきました。

JPRSにgTLDを取次いでほしいという指定事業者の要望の理由としては、国内のレジストラの多くはホスティング事業などで競合関係にあるため、やむなく海外のレジストラを使うことになるが、商習慣や為替リスク、言語の問題など、取引のハードルが高いというものでした。
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>一部の事業者からの要望があったからといって、gTLDの販売をされるよりも、当初の設立趣旨にある通り.jpの普及に専念されるべきではないでしょうか。また、競合という観点では、JPRS様の直販サービス(JPダイレクト)は、すべての指定事業者の競合に当たるのではないでしょうか?

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なお、3月5日にGMOさんを私が訪問した際に、熊谷会長から「JPRSがgTLDを販売しないことをこの場で約束してほしい」と要請されましたが、「gTLDの取次ぎについては確定していない状況であり、そのお約束はできない」と私はお答えしました。
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>私どもの議事録からすると会話内容は以下のとおりです。

2010年3月5日 11:00〜 弊社会議室にて
参加者:JPRS 東田様、宇井様、米田様  GMO:熊谷、西山、伊藤

熊谷「ICANNレジストラ資格取得の目的は」
東田「EPPシステムやポリシーなどの研究のためです」
熊谷「まさか取り次ぎはやらないですよね」
東田「当面は考えていませんが」
熊谷「絶対にやらないでください。競合になるし、とても賛成できません」
東田「そんな競合だなんて。GMOさんに対抗できるようなことはできませんよ」
西山「やらないならそのように発表されたらどうですか? 事業者は混乱してますよ」
東田「発表したらしたで、いろいろ言う方もいらっしゃるので、これはそっとしておきます」
(敬称略)

その後はまったくご連絡をいただいておりませんでしたので、十分なご説明をいただいたとは認識しておりません。

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その後、検討を重ね、現在はgTLDの取次ぎを開始する方向で準備を進めています。 JPRSが、指定事業者の皆さまのgTLD仕入先の選択肢の一つとなって、それが日本のドメイン名市場の発展と、それを通したインターネット社会の発展につながるものとなれば、と考えています。

もちろん、gTLDのレジストラであるGMOさんはじめ国内数社の方々とは競争関係となりますが、これは日本のインターネットの健全な発展のためにもよいことであり、お互いのサービスの特徴を出していくことができればと思っています。

JPRSがgTLDを取次ぐことは.jpの普及促進に相反するというご意見もあるようですが、先にも述べたとおり、さまざまなドメイン名がそれぞれの特徴をもって共存し、インターネット社会を支えています。.jpのレジストリであるJPRSがgTLDの存在を否定することはなく、それぞれ特徴のあるドメイン名を、それぞれのニーズを持つ利用者に提供することが大切と考えます。
*****

>JPRS様によるgTLDの取り扱いは、前述の.jpの委譲承認(Delegation)が行われた際の日本政府とICANN、JPNICを交えた数々の書簡の中でかわされている“約束”から大きく逸脱したものに思えます。また、我々の知る限りにおいては、JPドメイン名諮問(しもん)委員会における事前の議論、または事後の報告が行われた記録が公開されていません。JPNICの理事会においてもこの件に関する報告が行われた記録は公開されていません。この件に関して総務省、JPNICに対してどのようにご説明され、どのように理解を得てきたのでしょうか?

*****
JPRSの企業理念は「ネットワークの基盤を支える企業として、インターネットの発展に寄与し、人と社会の豊かな未来を築くことに貢献」することであり、この理念に基づく活動であれば積極的に取り組んでいきたいと思っています。
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>素晴らしいお考えだと思います。ただし、公共性の高い.jpのレジストリとしてICANNとの契約およびそれに基づくやりとりにのっとり、公正な競争のもとに事業を行っていただくことを強く望みます。

*****
今回、熊谷会長からいただいたご意見は、GMOの経営者としてはもっともなものであり、日本のインターネットのために、という視点では同じ方向を向いているものと思います。JPRSが十分に説明できていない部分も多く、また誤解されているところもあり、その点は今回ご説明の機会をいただいたものと感謝しています。
今後も同じインターネット関連事業者として、よりよいインターネット社会の実現のために刺激し合い、協力していければと思います。
*****

>これらの質問は、一企業の代表としてだけでなく、日本のインターネットの未来に期待をこめる一般の皆さまからの声も反映させていただいております。社会の公器となる企業として、日本国民の共有財産である.jpを管理する組織として、ぜひ日本の皆さまに対して明確なご回答をいただければ幸いです。

以上です。

執筆: この記事は熊谷正寿さんのブログ『【クマガイコム】GMOインターネット社長 熊谷正寿のブログ』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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