【シェアな生活】節約だけじゃない。”シェア”が生み出す新しい消費と楽しみ方 『ブックシェアカフェ』菅谷洋一氏インタビュー

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『ブックシェアカフェ』企画担当、菅谷洋一さんのインタビュー2回目。
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あらすじ
”シェア”による新しい消費とコミュニケーションについて取材中、『ブックシェアカフェ』という新しい形態のお店が高円寺にできたと知る。本が並んでてドリンク飲み放題など、そのお店は一見”漫画喫茶”なのだが違う部分がある。個室がなく全席オープン、雰囲気は綺麗な図書館。よくあるゲーム用高性能PCはなく、iPadが複数備え付けられている。電源や無線LANは自由に使えて月額2000円で月何回でも利用可能(混雑時制限あり)、読みたい本は必ずPOSを通し、そこ経由で会員制ウェブサイトに自動登録された自分が読んだ本へのレビュー執筆ができる。一体何故、このようなお店をつくったのか。企画担当の菅谷洋一さんにお話をきいた。

登場人物
菅谷=菅谷洋一さん。『ブックシェアカフェ』企画担当。
深水=ききて。深水英一郎(ガジェット通信)

菅谷さん

●”ブックシェア”という発想。”ブックシェア”ができること

――深水:『ブックシェアカフェ』をつくるに当たって参考にされた店舗はありますか?

菅谷:参考にしたのは、六本木ヒルズの『アカデミーヒルズ(http://www.academyhills.com/)』。47階にある、月一万円の会員制図書館なんですよ。月一万円の会員制スペース事業っていうのがあるんだなあというのがひとつ。そして京都の『ガケ書房』っていう本屋さん。『ガケ書房』は“貸し棚”をやっているんです。

――深水:いくつかのヒントをうまく取り込んでいるんですね。

菅谷:あと、古本屋さんへ行くとマンガの立ち読みをしている人がいっぱいいる。通常の書店で新刊のマンガはビニールがかかっていて開いて読むことはできないんですが、古本だとそれがなくて、人が集まってきている。さらに古本であるならば、「誰が持ってきたの?」「どんな感想を持って読み終わったの?」といった情報を付帯させることができるな、と思ったりしたことなどもヒントになっています。

――深水:本に落書き欄があって知らない人どうしでそこに書き込みながら回し読みしたら面白いですよね。そういうことをウェブ上で実現しちゃおうということですね。

菅谷:SNSって、まず人がいて、その人に時間軸がついたり人に他の人との相互リンクがついてくるじゃないですか。人だけじゃなくてモノも、オブジェクトとしてそこに投げ込んで一緒につないでいきたいなと。

――深水:物理的な本を舞台としたソーシャルリーディング(※)。
(※)読書体験の共有。例えばアンダーラインやコメントを文書上で共有し、他の誰かのコメントを読者しながら読むことができる仕組みなど。さらに発展してみんなで本を読みながらワイガヤできる仕組みも生まれつつある

菅谷:小学校のときの図書室の貸出カードって、誰が借りたかっていうのがわかりますよね。あれをヒントにしています。「俺が第一号だ」とか、ちょっとかわいい子の名前が入っていたりしたら、テンションが上がりますよね。あれを創りたいなと思ったんです。
 本当は、公共の図書館とか、それこそ『TSUTAYA』とか規模の大きいところでやれるといい。SNSってボリュームが面白さに直結する側面があるじゃないですか。10人しかいないコミュニティと100人のコミュニティではコンテンツの量が違うので。

――深水:多ければ多いほど楽しいですね。出会いも多いし、みんなの意見もリンクしてくる。

菅谷:そうですね。規模があった方がいいなと思いつつ、まずはやってみようよと。

POS

●POSとウェブ

――深水:POSデータとウェブ連携の仕組みが世の中に「面白い」と受け入れられれば、”シェア”だけじゃなくて他の業態も含めて広がっていく可能性はあるかもしれませんね。例えばすでに沢山のトランザクションがあるであろう”レンタル”とか。レンタルした人どうしで感想を共有できるSNS的な仕組み。

菅谷:そうですね。「あ、僕もきのうこれを借りたよ」っていうような言葉が行き来したら面白いと思います。レンタルの貸出履歴は、延滞料金を徴収したり在庫管理したりするためだけじゃなくて履歴をコンテンツ化して自動更新したらどうだろう?という提案は、業界の方々にしてみたいです。僕らがやり始めたことは、実験だけど、けっこう本質的なことをやってるんだよーみたいなことをわかって頂けたら嬉しいですね。

――深水:初めてこのサービスを知ったとき、やってるのは破天荒な若手のベンチャーか、お金持ちのどっちかだろうなと思ったわけですが

菅谷:そんなに事業予算があるわけじゃないですけど、実験を……正確に言えば「開発」をやろうか、ということです。パッケージの小売業界では、レンタルは横ばいでがんばっているんですが、セルが壊滅的に悪いわけですから、業界的にはなんとかしなければ…という力が働くと思います。レコード会社や出版社の業績が悪いということは、翻って小売も悪い、ということになるわけですから。
 アメリカのブロックバスタービデオが倒産して、日本はHMVが身売りして。推して知るべしですよね。あと、アメリカだと自動レンタルっていう自販機のデカイものがあって、それの大手のレッドボックスという会社の社長も「パッケージビデオはいずれ終わるだろう」と言ってますし。ほんとに推してしるべし、ですよね。

”読んだ”からのコミュニケーション

●”読んだ”だけでは終わらない、そこから始まる楽しみ

菅谷:いろんなお店に、いろんな利用履歴ってあると思います。例えば、僕なんかは家の近くのコンビニも会社の近くも『LAWSON』なんです。そうすると、『LAWSON』で沢山買い物をしていて、それって僕が年間に食べているものの三分の一から四分の一量だとすると、その分を『LAWSON』は把握しているはずなんです。その情報を、自動反映でグラフィカルに表現してくれるウェブサイトがあったら、僕は絶対アクセスするなぁと思います。「俺、意外に野菜食ってるなあ」みたいなことがわかると面白い。小売り側から見るとユーザーの囲い込みにもなるし。ウェブで言うところのページビューにもなるし。
 『みんなのレビュー』の開発担当の人間が草野球チームに入っていて、毎週末試合をやっているんですけど、チームの中にプログラマがいてスコアをつけていて。打率が何打数何安打とか、「今季お前は何割」だとか勝手に作ってくれるらしいんです。そうやって勝手に作って更新されるから、アクセスする。たぶん週に2、3回は見る。試合前も見るし、試合終わったらまた見るらしいです。
 だから、自分の試合履歴や購入履歴は、それ自体がコンテンツになると思ったんです。お店もいろんな業種でPOSデータがあると思うんですけど、それは売上・在庫を管理するだけじゃなくコンテンツになると。

――深水:とても面白い試みだと思います。リアルな共有空間としての店舗があり、それに対応する情報サイトとして『みんなのレビュー』がある。となると、どうなんでしょう。今、『みんなのレビュー』はログインした人にしか見えない状態になっていますけども、これは今後もそのままなのか、公開して行こうという考えていらっしゃるのか?

菅谷:それが面白ければですがまだ分かりません。。今は、性別とニックネームを設定したらそれは公開される仕組みになっているので、個人までは特定されないようにしています。

(つづく)

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