漫画「美味しんぼ」の原作者として有名な雁屋哲さんがブログで尖閣問題について語った内容が、ネットの2ちゃんねるで話題となっている。「侵略の謝罪・補償が、真の日中友好関係を築くための最初の一歩」とする雁屋さんに対し、反発の声が相次いでいるが、雁屋さんはそうした「周囲の声に逆らって」日中友好の大切さを訴えたいとしている。

「南京虐殺、全部で2000万人とも言われる中国人を殺戮したこと、731部隊の非人道的行為、その他、日本が過去に中国に侵略して犯したさまざまな犯罪的行為について、日本政府がきちんと謝罪し、被害を受けた人々に対する補償をすることが、真の日中友好関係を築くための最初の一歩である」

「『中年暴走族』の中国人船長に翻弄された」

   雁屋さんが自身のブログ「雁屋哲の美味しんぼ日記」に2010年11月10日に投稿した内容だ。尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突の後、「引き起こされた日中の問題について色々考えてきた」として、上記の記述を続けた。

   全体で約7000字の長文で、約8割が「日中」関係の内容だ。中身のごく一部を以下に抜粋してみる。

   「(ネットに流出した衝突時映像を見て)日本の一部の人が言うような中国の工作員による意図的な物ではないと私は確信した」。中国漁船に乗っていたのは、「だらしない」格好の男たちだったことなどから、「『中年暴走族』的な思慮を欠いた行動に出たものに違いない」と分析している。

   また、「日本政府の外交能力のなさ」や「理性を欠いていた中国政府の取った行動」も指摘した上で、「日本と中国は、『中年暴走族』の中国人船長に翻弄されたのである」とまとめている。

   そして、「われわれは、無闇に興奮せず、慎重に事を運ぶべきだろう」「日本人も、中国人も、冷静になりましょう」と訴え、日本と中国は真の友好関係を築かなければならない、と繰り返している。

「何で左翼ってこんな…」の声も

   この雁屋さんブログに対し、2ちゃんねるでは多数のスレッド(話題提供のための「板」)が立ち、中には約1000件の書き込みがあるスレッドもあった。複数見た範囲では、11月10日から反応が始まっており、「売国日本人」「なんでこんなに自分の国のこと嫌いになれるかなあ」などの反発の声が多く寄せられている。いわゆる放送禁止用語の侮蔑言葉を投げつける書き込みも多い。雁屋さんの尖閣問題をめぐる認識よりも、ブログ前段で登場した「歴史認識」への反発が多い様子もうかがえる。

   しかし、雁屋さんは同じブログで、衝突事件以降、「日中友好を声高に言えなくなっているのではないか」との現状認識を示しており、2ちゃんねるでみられた様な反応が出ることは折り込み済みのようだ。「このような状況だからこそ、私は、周囲の声に逆らって、敢えて、中国の人々との友好を深めようと強く言いたいのだ」とも書いている。

   こうした雁屋さんの意見に対しては、「何で左翼ってこんなアホウばっかりなんだ?」(2ちゃんねる、11月10日)との批判も多い。雁屋さん自身は、自己サイトの著書紹介欄の中で、「こんな本(「戦争中日本軍がオーストラリア人らにしたことなどの一部をまとめたもの、1995年出版」)を書いたおかげで、私は、『左翼』扱いをされるようになりました」と書いた上で、「今の世の中で、右だの左だの言う事自体、とても遅れていますね」と、そうした「レッテル張り」を退けている。

   10年11月13日からは、横浜市でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が始まる。11日夕現在、同会議期間中に日中首脳会談が実現するかどうかは、はっきりしないままだ。菅直人首相は11日、「会談ができるかは、中国側で判断されること」と記者団に説明した。

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