世代間対立がせまる初の民主主義国・日本

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今回はタケルンバさんのブログ『タケルンバ卿日記』からご寄稿いただきました。

世代間対立がせまる初の民主主義国・日本
日本は世界の中でも急速に高齢化が進んでいる国なわけで、その高齢化によって“世界初”の事態にこれから遭遇していくことになる。その中で意外とかえりみられていないのが、高齢化と民主主義の問題じゃなかろうか。

−“数は力なり”
と田中角栄氏は言ったわけだけども、民主主義ってのは基本的には多数決で物事を決めていく政治システム。少数は多数に従うわけだから、決定権は多数にあり、多数をつくる数が力を持つ。
そこで高齢化なわけだけども、高齢化とは文字通り高齢の方が増えるという現象で、人口比における高齢者の割合が増加することになる。

・人口ピラミッド(グラフ) 国立社会保証・人口問題研究所より
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/Pyramid_a.html

人口ピラミッドはこう変化するわけだよね。

・日本の将来推計人口(表1−3) 平成18年12月推計 国立社会保証・人口問題研究所より
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/suikei07/suikei.html

こちらの人口推計の、出生率・死亡率がともに真ん中の数字を見ると、2043年には60歳以上の人口が44.6%となり、18歳〜59歳の44.2%を上回る。有権者の過半数を60歳以上の方が占めるようになるわけですよ。

・衆議院議員選挙年齢別投票率の推移(グラフ) 財団法人明るい選挙推進協会より
http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/sg_nenrei.html

・参議院議員選挙年齢別投票率の推移(グラフ) 財団法人明るい選挙推進協会より
http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/sang_nenrei.html

しかも、基本的に若い人ほど投票率が低いので、有効投票ベースで考えると、高齢者の投票数の割合はさらに高まる。

・投票率いろいろ(表) 財団法人明るい選挙推進協会より
http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/s45.html

現に、昨年の総選挙をベースにしたこのデータではこうなっとります。

世代間対立が迫る初の民主主義国・日本
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        有権者   投票者   差
20〜59歳   61.9%   58.7%   -3.2
60歳以上   38.1%   41.3%   +3.2
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ということは、計算上は2043年に高齢者の数が現役世代を上回るわけだけども、多数決の根本である選挙ベースで考えると、もっと早くこの逆転現象が起きるわけだよね。

−現役世代の民意は反映されるのだろうか
そうなった場合、果たして現役世代の民意は反映されるのだろうかと。ここに疑問があるわけです。多数決で物事を決めるシステムである民主主義。この中で少数となった現役世代に生きる道はあるのかと。

今後日本は人口が減るわけですから、今までよりもパイは小さくなります。当たり前の話ですけども、経済活動も税収も、そして国家規模も予算も。増えるわけないです。増えたらインチキです。“効率化によって何とか”みたいな努力ばするとしても、限度はあるし、現にそれができる見通しがないから、なんとなーく先行きが暗い経済状況になっているわけでね。

で、パイが小さくなると、どうしたって国ができることは小さくなります。しょうがないよね、国の予算が減るんだから。収入が減るんだから、支出を減らさなくちゃならない。

……じゃ、何を減らそうか? ここに対立のタネがあると思うのですね。

–負担と給付の考え方が正反対
あえて性悪説で考えます。みんな自分の利益を優先する。こういう仮定で考えます。

その場合、現役世代は現役世代に有利な政策を望みます。子育て・教育環境の整備とか、失業対策とか。あとは将来の安心。年金とか健康保険とか。現在の幸福もさることながら、将来の備え、未来の幸福を実現する政策を望むはず。

一方高齢者は、将来よりも現在の幸福を優先しがちです。子育てや教育は関係ありませんし、仕事からはリタイアしているはず。将来の安心のための政策より、現在の安心のための政策を望むはず。年金で言えば、将来に備えるための制度整備よりは、「じゃあいくらくれるのよ」という給付額が大事。

現役世代は将来の自分に返ってくるのであれば、ある程度は負担を受け入れますし、そのためならば、歓迎しないにしろ給付先送りも何とか耐えられる。しかし高齢者は先に備えるための負担をする意義が現役世代に比べてあまりありませんし、先送りする給付分はできるだけ早くもらいたい。

つまり、負担と給付について考え方がまったく違うわけですね。対象も違うし、優先順位も違う。現役世代と高齢者では望む果実が違うわけだから、とりたい手段も異なります。当たり前ですよね。

−常に高齢者のターン
高齢者と現役世代。双方の利益が相反する政策がある。こうなった場合、どっちの政策をとるかを決めるのは何か。多数決ですよね。それが民主主義ですよね。つまり高齢化が進むと、常に高齢者寄りの政策が通り、常に現役世代寄りの政策が通らなくなる。こういう事態になりかねないわけですよ。

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衆院選当選者の平均年齢は52.0
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「衆院選・当選者の平均年齢、年代別比率」 平成21年8月31日 『時事ドットコム』
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_election-syugiin090831j-09-w370

現状でもこんな感じですから。物事を決める人=国会議員の平均年齢は、既に高齢者に近いところまできているわけで。

「今もう既にずっと高齢者のターンだよ」

というツッコミもありましょうが、高齢化によってますますこの傾向が強くなる。

−現役世代はまとまらない
またつらいことに、現役世代が求める政策には個人差が大きい。高齢者は比較的シンプルなんですよ。欲しいものは短期的な幸福。すぐつかめる幸せがいいわけですよ。未来よりも現在。しかし現役世代の場合、人によって短期的・長期的の選択が分かれる。価値観や境遇によってブレがある。明日の備えをしたい人もいれば、今日を何とかしたい人もいる。

ただでさえ今後は少数派になろうとしているのに、ひとつにまとまれないわけですな。少なくても高齢者よりは。

−現役世代にたまる不満
あらゆる政治的選択の場面で、高齢者の意見が常に通り、現役世代の意見が常に通らない。高齢者向きの政治が行われ、現役世代向きの政治が後回しにされる。世代間の人口バランスの変化によって、多数決のありようが変わり、政治もまた変わる。

そうなった場合に、意見が通らない少数派である現役世代と高齢者の間に、世代間の対立が生まれやしないか。多数決という決定方法に対する不満。民主主義に対する疑問が起こらないかと。

−民族紛争に似た状況
で、これって民族紛争でよくあるパターンなんです。ある地域に少数民族がいる。しかし少数だけに、多数決で物事を決めている間は多数に従わざるをえない。次第に不満がたまり武装ほう起。こういうパターン。

しかしまあこういうパターンの場合、一応は解決方法があるんですよ。例えば分離独立を認めるとか。その少数民族が住んでいる地域を独立させ、自治を認める。こうすればその地域においては少数民族が全てとなり、多数決が生きてきますよね。

しかしこれは日本ではできないんです。高齢化は日本全国津々浦々で起きている現象だから。“現役世代共和国”をどこにもつくれないわけですよ。分離独立させられない。高齢者は全国あまねくおり、現役世代は全国的に少数となる。となると現役世代に逃げ場がない。ユートピアはどこにもない。

こうなってくると“多数決”という民主主義の手段が混乱のもとになるかもしれない。であるならば、多数決によらない民主主義のスタイルをとらなくてはならないわけですね。

−多数決型民主主義ではなく合意型民主主義
高齢化にともない、日本に望まれる民主主義のあり方として、どうしてもこうなってくるのかなあと。“All or Nothing”で白黒つけるやり方ではなく、対話と協調の中から活路を見出す方法というか。

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多数決型民主主義
「ウェストミンスターモデル」とも言われる。アングロサクソン諸国が該当する。二党制、単独政権、首相もしくは大統領の優越、小選挙区制、多元主義、中央集権的単一国家、一院制、軟性憲法、憲法裁判所の不在、従属した中央銀行などのうち、多数の点に当てはまることを想定している。
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合意形成型民主主義
「コンセンサスモデル」とも言われる。ヨーロッパ大陸の小国が該当する。多党制、連立政権、議会もしくは政党の優越、比例代表制、コーポラティズム、地方分権的連邦制、二院制、硬性憲法、憲法裁判所の存在、独立した中央銀行などのうち、多数の点に当てはまることを想定している。
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民主主義 『フリー百科事典ウィキペディア』より
http://ja.wikipedia.org/wiki/民主主義

例えば選挙制度なんかでも、小選挙区ではひとつの選挙区から出る当選者はひとりのため、高齢者寄りの考え方をする候補者が常に勝つような状況が生まれかねない。なわけで、少数派となっても割合通りの当選者を出せる比例区の割合を増やしたほうが、今後はいいのかもしれないし、完全比例制にするとか、中選挙区制の復活とか。そういう選択肢を含めて考えなくちゃならない。

また政党の話だと、政党の決定もまた高齢者主導になる可能性が高いので、議員ひとりひとりの自由度を高めるべく、政党助成金は政党ではなく、議員個人に配る方が望ましい。また、そういうお金の縛りがなくなることで、いわゆる党議拘束をなくし、政党の壁を越えた投票を容易にする方が理にかなっている。

アメリカなんかだと“cross voting(交差投票)”といって、民主党議員が共和党法案に、あるいは共和党議員が民主党法案に賛成・反対することが普通にあるのだけども、“短期的な利益と長期的な利益。どちらを優先するか”というような年齢が問われる政策の場合、政党を構成する思想・信条によって党議拘束をかけるよりは、cross votingを認め、自らの立場に基づいた投票ができるようにしないと、今後の高齢化社会の民主主義は行き詰まるような気がしてる。

–世代間対立が迫る初の民主主義国
大げさに言うとこういうことなのかな。20世紀は民族間対立によって民主主義のあり方が問われた世紀だとするならば、21世紀は世代間対立によって民主主義のあり方が問われるようになるであろうと。

右とか左とか、保守とか革新とかじゃなくて、年齢という立ち位置によって優先すべき政策が決まる。思想信条ではなく世代の政治。高齢化が進むということは、政治が変わり、民主主義のスタイルも変わるということなんだろうなあ。

執筆: この記事はタケルンバさんのブログ『タケルンバ卿日記』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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