紀伊國屋書店新宿本店 ピクウィック・クラブさんに聞く『これだけは読んでおきたいSF小説』
世の中にはあんな本やこんな本、いろんな本がある。そのテーマも十人十色。「感動したい本が読みたい!」「思いっきり怖い本を味わいたい」と思っても、 どんな本を選べばいいのか分からない! とお悩みの方も多いはずでは?
 そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のソムリエ、コンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
 そんな彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが毎週水曜日に配信する、この「わたしの3冊」だ。【「わたしの3冊」バックナンバーはこちらから】

 11月のテーマは『これだけは読んでおきたいSF小説』。
 今回は毎月第2水曜日に登場して頂いている紀伊國屋書店 新宿本店のピクウィック・クラブさんが選定。どんな3冊を選んだのか?


◆『ニューロマンサー』

著者:ウィリアム・ギブスン
出版社:早川書房 
定価(税込み):1008円

 サイバーパンクの金字塔として名高い本作。サイバーパンクのブームはたぶんとっくの昔に終わっているのでしょうが、この本で描かれたある種の美学は今ますます有効なのではないかと思えます。人間と都市とコンピューターとネットワークが交錯する場所で何が起こり、どんな美が生まれるのか。古い過去に生み出された芸術や音楽やガジェットがどのように再構成され、それがどのように新しいテクノロジーと組み合わされ、そこにどんな美しさが見出されるのか。これはそういう事を書いている小説でもあり、そのビジョンはまだまだ新鮮な発見をもたらします。

◆『虚数』


著者:スタニスワフ・レム
出版社:国書刊行会
定価(税込み):2520円

 なにが面白くてこんな本を読むのだろう、少なくとも細部の意味はまるで分からないのに、と思う。読書という行為にはいくつかのレイヤーがあって、第一に書かれている内容を理解する層、第二に作品によって目指されたものを推定する層、第三にそこでなにが起こっているのかを読む層がある。『虚数』という作品に対して第一の層で太刀打ちしようとしても、よほどのものでなければ衒学的の謗りを免れ得ないし、一歩間違えばカルトだ(もっとも人間味がないのであまりその気は感じない)。第二の層では比較的成功するかもしれない。小説を解決するという読み方を好む者であれば、架空の書物という仕掛けを手がかりになんとなくわかった気にはなれる。ただしそれだけなら優れた書評なり解説を読むのと変わらない。第三の層。おそらくレム本人にならない限り、しかも書いている瞬間にしか起こりえない現象に肉薄することはできるのか。できる。レムのようにはできないが、各人が各人の想像力において、できる。よりスポーティだが、この一方通行な理解の仕方が作家の思考の轍くらいには沿っているだろうから、そう読める。
要約すると、この本を読むことは無謀に違いないが、なんらかの無謀に直面している人が読めば大いに刺激になるはずだし、それは面白いといっていいはずだ。

◆『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』


著者:飛浩隆
出版社:早川書房
定価(税込み):840円、882円
 
もし日本人作家のSFを読むなら、そこに美しさがなければ翻訳物とあまり変わらない。
美しさはエゴと悪意から生じる。母語で書かれたことが希釈されていない美を文体に、舞台設定に、登場人物に塗りたくっている。その作り込みが正しく小説であり、正しくSFであるように思うのと、選者がほぼ初めて読んだSF小説であるため、この作品群を推す。
仮想空間に作られた南ヨーロッパ風のリゾート地を舞台に、プログラムされたAIたちを主人公とした、衝撃的な物語。この小説の説明としては、著者自身が後書きで述べるところの「清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。」という一文に、それが完璧に実現されているということ以外は何も付け加える必要がありません。

◇   ◇   ◇

【今回の書店】
紀伊國屋書店 新宿本店

住所:東京都新宿区新宿3-17-7
TEL:03-3354-0131
FAX:03-3354-0275

■アクセス
JR新宿駅東口より徒歩3分、 地下鉄丸の内線・副都心線・都営新宿線「新宿三丁目」B7、B8出口より徒歩1分(地下道より直結)

■営業時間
10:00AM〜9:00PM

■ウェブサイト
http://www.kinokuniya.co.jp/04f/d03/tokyo/01.htm


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