「東京に来ている時は遊んでる」―藤田宜永インタビュー(1)

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 直木賞作家・藤田宜永さんの新刊『還暦探偵』(新潮社/刊)は人生の下り坂を生きる人々の生き様をユーモラスに、時にはしめやかな雰囲気で描いた短編集。その魅力については先日のニュース記事でお伝えしましたが、今回は藤田さんにインタビューを敢行、執筆時のエピソードや同じく直木賞作家である奥さまの小池真理子さんとの生活についてお話を伺ってきました。

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■「東京に来ている時は遊んでる」
―藤田さんは奥さま(同じく直木賞作家の小池真理子氏)ともども軽井沢にお住まいとのことですが、打ち合わせなどが入ると東京に出てこられるんですか?

藤田「そうだね。僕の仕事は原稿を書くのが第一です。だから軽井沢にいるときはほとんど引きこもって原稿を書いてるね。今日みたいな取材とか、テレビ収録やプロモーション撮影、打合せがある時には東京に出てくるんだよ。原稿を書いている時が僕にとっての仕事だと思っているので東京に来ている時は遊んでる。“東京リゾート”って言ってね(笑)
取材を受けるのなんて難しいことじゃないじゃない。僕の本を取り上げてくれているわけだし、インタビュアーが突然“あなたの本は面白くない”と言いだすこともないし(笑)ということで気楽にできるわけ。
軽井沢にいる時はバンバン原稿を書いてほとんど家から出ない。東京に出てきたら息抜きや打合せという感じだね」

―ほとんど引きこもった状態で執筆されているとおっしゃっていましたが、一日に何時間くらい書かれるんですか?

藤田「日にもよるけど大体11時くらいに始めて、18、19時くらいまでやるね。最低6時間以上はやってる。夕食後は割と自由になっていて、資料を読んだり考え事をしたりだね。向こう(軽井沢)にいる時は小説のことしか考えいないと言っていいくらい」

―資料読みでない、純粋な読書というのもその時間にされているんですか?

藤田「そうだね。作家になると段々と読書が不健康になるのよ。自分の役に立つものを読もうとするというか。あとは新人文学賞の選考委員をやっていたりもするから、読まざるをえないことも多いしさ。今は読まなければいけない資料を読んだり、観なければいけない映像を見たり、“やらなきゃいけないこと”に時間を取られることが多いね」

―藤田さんの新刊『還暦探偵』についてお聞かせください。この作品で藤田さんが60歳前後を世代を中心に据えた理由は何だったのでしょうか。

藤田「それは簡単、僕が還暦だから(笑)まあ数年前からね、自分の友人もリタイヤしたり役員になったり、栄枯盛衰というわけじゃないけどいろいろあって、自分の年齢に近い人間を主人公にすることが多くなったね」

―自分より年齢が上の人は書きにくいという作家さんもいらっしゃいますが、藤田さんは登場人物の年齢によって書きやすさ、書きにくさを感じることはありますか?

藤田「そうねえ…下も上も難しいといえば難しくて、年下の人間を書くのが簡単というわけじゃないね。だって僕が20歳の頃と今の20歳の人は違うじゃない。今はネットだってあるし、それぞれを取り巻く現象はそれこそ全然違う。
僕の『転々』という作品は映画にもなったんだけど、主人公は学生。書いた時、僕は50代だったんだけど、若い人達を観察してそこに自分の気持ちを乗っけるように書いたんだ。今の若い人たちと自分の若い頃の共通した気持ちもあるわけで、それを見つけて乗っけたんだよ」

―今おっしゃっていた“共通の気持ち”というのは年齢が上の方々にも感じることはありますか?

藤田「今の僕くらいの年齢が一番年下のことも年上のこともわかるんじゃないかな。精神の動脈硬化を起こしていないから“今の若い奴らは何だ”とも思わないし、かといって70歳の人を見ると“おれも10年後こうなるのかな”とも考えるしね。
60歳だと80歳の人ともきちんと応対できるけども、20代だと80歳を相手にするのはちょっときついかもしれないよね。もちろん個人差もあるだろうけど、60歳くらいが両方をよく見られると思う」

(第2回「未だに僕もかみさんとディベートしてますよ」 につづく)
(第3回探偵小説ではないのですが、“人生の探偵小説”だと思って読んで欲しい。 につづく)


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