老齢の夫婦がケンカして…

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 久々にいい短編集を読んだ。
 藤田宜永氏の新刊『還暦探偵』(新潮社/刊)を読んだ感想である。
 
 タイトルが示す通り、この作品にはいずれも60歳前後の、いわゆる“団塊の世代”と呼ばれる人々が中心に据えられている。
 特に秀逸なのが『喧嘩の履歴』
 娘の婚約者との顔合わせを済ませた主人公夫婦が久しぶりに二人で酒を飲もうと銀座のバーに立ち寄る。娘の婚約者についての評価の食い違い(夫は彼を気に入らず、逆に妻は彼を認めている)もあり、バーに入るまでの夫婦の間にはややギクシャクした空気が流れているのだが、先客としてバーにいた若い(といっても30代の)カップルもまた言い合いをしており、夫婦はそれに聞き入ってしまう。彼らの口論は夫婦に過去の喧嘩の記憶を喚起させ、それは娘の婚約者の話題とも絶妙に絡み合って行く。
 いうまでもなく喧嘩の記憶とは、その男女の歴史そのものだ。その意味でこの短編は“団塊の世代”の人々に、長く連れ添った配偶者(または恋人)をもう一度振り返ってよく眺める機会を与えてくれる。
 最終的に夫は妻にやり込められてしまうのだが、理屈っぽく勝気な妻にはなんとも言えない色気があり、このあたりは男女の機微を描くことにかけては定評のある藤田氏の面目躍如といったところか。

 この他にも、ひょんなことから還暦の男二人が、かつての同級生の女性から彼女の夫の素行調査を依頼される表題作『還暦探偵』や、熟年の性と死をしめやかかつユーモラスに描いた『通夜の情事』など、この世代の人々が抱える迷いや諦め、達観が垣間見える短編が6編収録されている。

 “団塊の世代”だけでなく若い人でも充分に楽しめるので、是非読んでみてほしい一冊だ。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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