Android 2.2の伏兵!低価格スマートフォンのファーウェイの実力【世界のモバイル】
日本ではSamsung電子Galaxy Sの発売やHTC Desire HDの予約開始、またグローバルではWindows Phone7がいよいよ登場するなどこの冬はスマートフォンの話題が目白押しである。これら話題の製品はいずれもハイスペックなiPhone対抗ともいえる高機能スマートフォンであり、世界中で注目の的となっている。

だが一方では手軽に購入できる安価なスマートフォンも最近では数が増えている。例えばインフラベンダーとして成長著しいファーウェイ(華為、Huawei)は各国の通信事業者向けにモデムや携帯電話のみならずスマートフォンのOEM供給も開始しており、ヨーロッパではVodafoneが自社ブランドで無料販売しているAndroid端末も同社が手がけた製品である。

Vodafoneが契約込みで無料販売しているAndroid端末、Vodafone 845はファーウェイ製

そのファーウェイの新製品、「IDEOS」(U8150)は目だった機能は無いものの、最新のAndroid OS 2.2を搭載した伏兵的な存在だ。単体価格も日本円で2万円台前半と他社の同等品とくらべても割安であり、安い料金プランとの組み合わせでこのIDEOSを無料で提供している海外の通信事業者も多い。通信方式はHSDPA 7.2Mbps、無線LANにも対応しておりWEBやSNSサービスの利用もストレスなく行える上に、104x54.8x13.5mm、100gと小ぶりなサイズは学生や女性でも気軽に扱えそうだ。ディスプレイは2.8インチQVGAとハイエンドスマートフォンにはかなわないものの、最新OSと必要十分な機能を搭載しているとあって一般コンシューマー層には十分魅力的な製品に映るだろう。
OS 2.2搭載ながら安価なスマートフォン、IDEOS

またこのIDEOSはファーウェイが独自の商品ブランドで販売展開をしている。ファーウェイの製品はこれまでは基本的にOEMであり、通信事業者など相手先のブランド名をつけて販売されていた。だがIDEOSはファーウェイの端末ブランドをアピールするためにわかりやすい名称をつけており、しかも電池カバーはカラフルでPOPなものにしているなど"垢抜けた"製品になっている。ハイエンド嗜好の一部のユーザーを狙った製品ではなく、若い世代を中心としたボリュームゾーンを狙った戦略的な製品であり、数を売ることで自社ブランドの価値も高めようという一石二鳥を狙った製品でもあるのだ。
カラフルなボディーも特徴。事業者売りだけではなく単体販売も行われている

日常的な利用には十分なスペック、そして値段の安さを感じさせないIDEOSのような製品がこの低価格で出てきたことは大手メーカーにとっても脅威だろう。同じ中国のZTEも端末事業を重視する戦略をはじめており、年内にも同様にAndroidスマートフォンの販売を開始する予定だ。価格も大手メーカーの同スペック製品より2-3割安く、通信事業者も契約セットで販売しやすい。ここ1-2年でMotorolaやSony Ericssonなどはスマートフォンシフトを始めているが、IDEOSのような製品は今後エントリーのみならずミッドレンジクラスの製品とバッティングしていくだろう。大手メーカーのスマートフォンの開発戦略も見直しが必要になっていくかもしれない。

さて日本でもスマートフォン市場がようやく立ち上がりはじめている。現状では日本メーカーのスマートフォンラインナップは国内向け携帯電話のバリエーションと比較すると数に乏しく、海外メーカーに差をつけられている。今後日本メーカーもスマートフォンの開発に本格的に注力していくだろうが、そうなれば国内向けだけではコストが合わず、海外市場までもを視野にいれた開発を行う必要があるだろう。例えばシャープが発表した電子書籍対応端末「ガラパゴス」は海外通信事業者とも販売交渉に入っているとの話が聞かれる。

だがこれからはNokiaやSamsung電子などの携帯電話大手メーカー、AppleやRIM、HTCなどのスマートフォン専業メーカーだけでなく、ファーウェイ、ZTEといった中国大手インフラベンダーまでもが日本メーカーのライバルとして海外市場で立ちはだかることになっていくだろう。逆に欧米韓国勢だけではなく、今後は中国勢のスマートフォンが日本市場に次々に入ってくる状況も十分考えられる。

このIDEOSも各国の3G方式別に複数のモデルが出ているが、そのうちの1つのモデル(U8150-B)は日本で利用されている1700MHz、UMTS バンドIXに対応している。すなわち日本での利用、販売が視野に入った製品になっているのだ。なおイーモバイルはファーウェイのモデムや端末を多数導入しており、IDEOSも日本で正式に販売される可能性もあるだろう。海外でSIMロックフリーで2万円台の製品であれば、2年契約で月々1000円のアシストで無料、という販売も不可能ではないはずだ。

日本市場では日本メーカーの製品に人気が集まり、海外メーカー端末は売れないという通説もiPhoneやXperiaの登場で崩れはじめている。日本メーカーは今後国内で売れる端末を作りつつも、そのまま海外にも出せる製品を開発していかなくては海外勢に国内外で大きく攻勢をかけられ守戦一方となってしまうだろう。またファーウェイのIDEOSはスマートフォンとしてはエントリーモデルにすぎない、と安心してはいけない。ファーウェイはすでに3.8インチWVGAディスプレイを搭載したU8800を発表しており、大手メーカーと並ぶハイエンド端末分野にも今後は進出する予定なのだ。スマートフォンの新興勢力の登場は、世界中のメーカーだけではなく日本メーカーにとっても今後強力なライバルになっていくだろう。
U8800は大型ディスプレイを搭載したハイエンド端末

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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