夢枕獏が語る“サイコダイバーシリーズ”の33年(前編)

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 空海のミイラを巡る秘密教団を美空、文成仙吉、九門鳳介が迎え撃つ、伝説の第1作から33年。夢枕獏「サイコダイバー・シリーズ」が遂に完結!
 『魔獣狩り 淫楽編』で幕を開け、累計430万部という大ヒットとなったこのシリーズが、『新・魔獣狩り12 完結編・倭王の城 上』『新・魔獣狩り12 完結編・倭王の城 下』で大団円を迎えます。
 そこで今回は夢枕さんを直撃!それによると「サイコダイバー・シリーズ」の構想は思わぬところから生まれたようです。

◇ ◇ ◇

―本作『新・魔獣狩り12 完結編・倭王の城 上』『新・魔獣狩り13 完結編・倭王の城 下』でついにサイコダイバーシリーズが完結します。このシリーズを構想されたのは今から33年前とのことですが、今振り返ってみてどのような感想をお持ちですか?

夢枕「結果として33年かかってしまいましたが、書き出した時はそんなにかかるとは思っていませんでした。“まあ終わるだろう”という気持ちだったんですけど、途中からは“完結するまで俺は生きているのかな?”と思ったこともありましたね。“これは長生きしないと終わらないぞ”と。だから率直なところでいえば“完結するまで生きていてよかったな”というのがあります」

―このシリーズを構想する際の最初のひらめきはどんなものだったのでしょうか。

夢枕「最初は世界で一番高い山に登る男の話を書こうとしたんです。でも当時、エベレストはもう登られてしまっていました。そこで、地球上で世界で一番高い“未知の山”がある可能性を探ったんですけど、なかった。衛星写真で地球の全表面を撮られてしまっていたので地球上にわからない場所はもうなかったんです。だから世界一高い山を地球上にリアルに設定することは無理だということがわかりまして、それならば人の意識の中に世界一高い山がそびえていて、その山を登る話にしようかなと思ったんです。
そんなことを考えている時に、今はもう祥伝社を辞められたのですが名倉さんという編集者の方が僕のところに来て、祥伝社の『ノン・ノベル』で一本書いてみませんかというお話をいただいたのでその話をしたんです。そうしたら“それ冒険小説になりませんか?”と言われたんですね。それでできたのがこのシリーズなんですよ。
でも最終的には、意識の中の山を登る話でもなく、空海というお坊さんのミイラの脳に潜る、これを小説ではサイコダイビングと呼んでいるんですけど、空海のミイラの脳にサイコダイビングする話に変わっちゃったんです。
空海は1000年以上前に亡くなっているんですけど、未だに高野山でミイラになって生きているという伝説があるんですよ」

―「サイコダイビング」そのものが最初の閃きというわけではなかったんですね。

夢枕「ええ、最初は“山”でしたね。サイコダイビングそのものは僕のアイデアではなく、アラン・E・ナースが書いた短編にもありますし、日本でも小松左京さんが『ゴルディアスの結び目』というお話で書いています。それも人間の脳の中へ潜っていく人間の話なんですけど、読んだ時にすごくびっくりしました。それでこの山の話の方と結びつけた感じですね」

―「サイコダイビング」という概念が広まったのは夢枕先生の功績が大きいかと思いますが、先生ご自身はこの概念がここまで広まることは予想していましたか?

夢枕「書いている時は夢中でそこまで考えていなかったですね。でも長くやっていましたので、その間に自然とそういう考えや概念が出てきたのではないでしょうか。途中からは人間の脳というよりは電脳世界に入っていくような話が多くなりましたよね」

―夢枕先生の作風はSF、または伝奇小説というだけでは括ることのできない特異なものですが、そのような作家としての個性が確立されたのはいつごろのことなのでしょうか。

夢枕「わかんないなあ(笑)あったといえば初めからあったと思うし、わからないですね。ただ自分で作家としての個性が確立したと思ってしまうと、書くことがつまらなくなってくるんじゃないかという気はしていますね。
自分の個性を確立しようと思って書くわけではなく、その都度自分の好きなことを一生懸命やっているということで、それはいろんなジャンルでものを創って活躍されている方はみんなそうなのではないでしょうか。“まだこういうキャラの芸人は出ていないよな”ということで自分のキャラクターを作っていくような個性の作り方はしていないと思うんですよね」

―では、まだご自身でも個性が確立されたとは思っていらっしゃらない。

夢枕「何らかの個性はあると思うんですけどね。いくつか自覚症状みたいなものはありますけど、確立というものとは違うと思っていて、自分としてはまだ発展途上という感じです。いくつか空けていない引き出しや小出しにしかしていない場所がまだあるので、そちらの方から今後もう少し何か出せるんじゃないかという気はしていますね」

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サイコ・ダイバーシリーズの著者・夢枕 獏さんのサイン色紙を抽選で1名の方にプレゼント致します。 件名に「夢枕 獏さんのサイン」、本文には名前とインタビューの感想を明記の上、ご応募ください。返信をもって当選メールとさせて頂きます。
(締め切りは2010年11月20日)
あて先はこちら(インタビューの末尾にあて先があります)

(後編につづく)


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