「では、A案とB案の2案出して下さいね」

 クリエイティブ系の仕事の人は、企画やデザインをクライアントや代理店に提出するとき、このように言われることが多いといいます。もっともこれは、クリエイティブ系の仕事に限らず、どんな仕事でも「複数の案を提出して下さい」とお願いされることは珍しくありません。

 しかし、書籍『2択思考』の著者であり、物事を2択で選択していくことの利点を説く分類王の石黒謙吾さんは、これを常々「おかしい」と思っているそうです。

 たとえば本の表紙を決めるとき。石黒さんはデザイナーさんが2案あげてきたとしても、その中から自分がいいと思う方だけを選んで、「これでいきたいです」と出版社に提出するとのこと。石黒さんがそうするのは、「目の前に2個出してくれないと決めないのはズルイと思っているから」。

 「複数の案から検討したいのでよろしく」と2択の状態を作ってもらわないと選べないというのは、「イメージ不足、あるいは想像力の欠如と言ってもいいでしょう」と石黒さん。たとえ目の前に1案しかなかったとしても、見えないもう1案を頭の中で想像して目の前のものと2択をすれば、それがOKかどうかは判断できるはずなのです。

 また、他の事例として次のようにも解説しています。
 
 ある女性が今、結婚してもいいと思って付き合っている男性がいたとする。その女性と雑談していて、彼女がこう言ったとします。「でも、決め手に欠けるから、もうひとりの候補が出てきてから、2人を比べてからどちらにするか決めたいんです」

 どうでしょうか? 誰でもズルイ女だと批判したくなるでしょう。「もっと他にいい男性が出てきたらいいな」と思って悩んでいるのなら、他の男性が現れる可能性を頭の中でイメージして、その2人を比べて、今の彼と結婚するかしないか決めればいいのです。
 
 2案出してくださいというのは、まさにこのズルイ女と同じ。

 たしかに「複数の案を出して下さい」というのは、直しのやりとりやディレクションの手間を減らすことにもなるので、クリエイティブを理解していないクライアントが相手の場合は、一見効率のよい手段かも知れません。デザイナーさんが悩んで、意見を聞きたいから自主的に2案作るということもあるでしょう。

 しかし石黒さんは、「決定する立場にある人が、こうした受動的な選択に慣れていくと、自分の中で本質的に何がいいのか、ということを能動的に考えられなくなる」といいます。つまり「楽をしていると、どんどん感覚が鈍っていく」ので、結果として2択どころか何も選べないなんてことになってしまい、「捨て案でいいからとにかく数は揃えてもらいたいんです」というトホホな人になってしまうと......。

 もし、自分にも思い当たる節がある人は、石黒さんの『2択思考』を読んでみてはいかがでしょうか。本書を「手に取る」「取らない」というところからすでに、2択思考は始まっているのですから。



『2択思考』
 著者:石黒謙吾
 出版社:マガジンハウス
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