ジェフリー・ディーヴァーは、『ボーン・コレクター』(文春文庫)の大ヒット以来、刊行される作品のすべてがミステリー・ファンからの注目を集めるようになった作家だ。彼の看板シリーズは車椅子に乗った鑑識の天才リンカーン・ライムと美貌の刑事アメリア・サックスのコンビが活躍する連作だが、そこからスピン・オフしたのがキャサリン・ダンス・シリーズだ。カリフォルニア州捜査局西中央支局の捜査官であるキャサリンは、会話をしている相手のボディ・ランゲージを読み取り、その人物が本当のことを言っているか否かを判断するキネシクス能力の持ち主だ。第一作『スリーピング・ドール』(文藝春秋)に続き、「人間嘘発見器」が活躍する新作のお目見えだ。10月29日発売の『ロードサイド・クロス』である。
 今回キャサリンが立ち向かうのは、ネット上のトラブルに端を発したと思われる連続襲撃事件だ。街道脇に死者を悼むかのような花輪付きの十字架が立てられた。だがそれは、これから被害者が出るという予告だったのだ。女子高生が車のトランクに閉じ込められ、満潮の波打ち際に放置されるという事件が起きた。捜査を行ったキャサリンは、最初の被害者となった少女と同じ学校に通う、トラヴィスに着目した。オンライン・ゲームのマニアであるトラヴィスを、周囲の人間は仮想世界に住むオタクといって揶揄する。彼は〈ザ・チルトン・レポート〉という有名ブログで報道された事件の関係者でもあったが、そのエントリーは彼に対する悪意あるコメントで溢れかえっていた。そして被害者となった少女は、その悪意あるコメントを残した一人でもあったのだ。トラヴィスから事情聴取を行ったキャサリンだが、その後彼は父親の拳銃を盗み出して姿を消した。そして第二の十字架が現れ、新しい被害者が......。
 ディーヴァーはこれまで『青い虚空』『ソウル・コレクター』といった作品で、高度情報化社会だからこそ起こりうる犯罪事件を描いてきた。誰もが情報の発信者となることができ、そして誰もがネット犯罪の被害者となりうる。そうした現象の中で生じたひずみを、圧倒的な迫力で描いたのが本書だ。本サイトの読者に、mixi、GREE、Twitter、Facebookなどの主要なコミュニケーションツールを使ったことがない人は稀だろう。ネットでのコミュニケーションが容易になった時代だからこそ読まれるべき一冊である。もちろんこの作者らしく読者サービスも満点で、この事件以外にもさまざまな苦難が主人公に襲いかかる。それらに負けず、闘うキャサリン・ダンスのたくましい姿勢にも注目だ。
 なお、作者のジェフリー・ディーヴァーは11月に初来日を果たす。来る11月10日(水)には、都内・丸善丸の内本店にてトーク&サイン会も開催される予定だ。関東近郊で関心のある方は、ぜひこの稀代のベストセラー作家の創作の秘密に触れられることをお勧めする。
詳細は丸善HPインフォメーションにてhttp://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/11585.aspx







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