「いい習慣は才能を超える」―東レ経営研究所・佐々木常夫インタビュー(3)

写真拡大

 前回前々回と、東レ経営研究所の特別顧問であり、この度新刊『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版/刊)を刊行した佐々木常夫さんにお話を伺ってきました。
 佐々木さんといえば、奥さまがうつ病、ご子息が自閉症だったこともあり毎日18時に退社しながらも、仕事で大きな成果をあげ続けてきたことで有名です。
 仕事の効率化ということについて、どのようなことをされていたのでしょうか?

■「いい習慣は才能を超える」
―奥さまがうつ病になったり、息子さんが自閉症だったこともあり、毎日18時に退社されていた佐々木さんですが、仕事の効率化としてやっていたことはありますか?

佐々木「会社の仕事って雑用の塊ですからね。重要な仕事なんてほとんどないですよ。『そうか、君は課長になったのか。』に書いているんですけど、私には“仕事の進め方10カ条”というのがあって、この10カ条を30年間ずっと言い続けています。私は20代後半から30代にかけて、仕事はこうやるべき、というものをずっとノートに書き留めていた時のものです。
例えば「仕事をする前に必ず計画を立てる」「重要な仕事は何かを見極める」などがあります。
こういった習慣の中にどっぷり浸かることで、仕事を効率化できますし、自然に仕事の力も伸びていきますよ。私はいい習慣は才能を超えると思っています」

―そういったご家庭の事情というのは職場の方々には伏せていらしたんですか?

佐々木「最初は伏せていましたけど、でも課長だったときは言いましたね。あの時は家内が入院していた時期でしたし、子供が小さかったのでご飯を作らなければならなかったこともあって、周りにちゃんと説明する必要がありました。でも、私はもともと部下に会社の仕事は6時までに終わらせて帰りなさいと言っていたこともあって、みんな協力してくれましたね」

―辛い状況のなか、気持ちが折れそうになる時はなかったですか?

佐々木「若い時はなかったですね。家内が3年ほど入院していた時があったんですけど、下の娘なんかは料理の手伝いをしてくれるし、私が早く帰ってくることがわかっているものですから駅まで迎えにきてくれるんですよね。それで一緒に帰るんですけど楽しいですよ。家までの15分は至福の時でした。家事も好きでしたので苦にはなりませんでしたね。
ただ後半の1997〜8年に家内がうつ病になった時は辛かったです。大変でしたね。うちの場合は同じことを何回も言いますし、夜も寝ないので話を聞いてあげないとといけないでしょう。私は睡眠時間をきちんと取らないとダメな方なので、それが本当に辛かったです。会社での責任も大きかったですし、これから役員になるかどうか、言ってみれば“男最後の勝負”という時だったので」

―佐々木さんの人生に影響を与えた本を3冊ほどご紹介いただけますか。

佐々木「私が一番影響を受けたのが『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』です。これは私が課長になった時に出会った本なのですが、私自身父親を知らないこともあって“父親ってこんなに優しいのか”“父親の息子に対する愛情はこんなにも深いのか”と感銘を受けました。私の座右の書ですよ。
もう一冊は『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で、旧日本軍の栗林中将についての本。彼は太平洋戦争でアメリカ軍を最も苦しめた将校です。しかし、彼は戦争反対派だったこともあって、最後は死に場所に行かされたんですね。彼はアメリカ軍を本土に上陸させないために、1日でも長く引きとめて和平交渉に持っていけないかという時間稼ぎのために戦略を練るわけです。みんな死ぬことはわかっているんですが、彼はそのミッションのために決してバンザイ突撃は許さない。また、彼は優れた戦略家でありながら自分の家族に対して愛情溢れる手紙を何通も出しているんですけど、それがまたいいんです。
みんな死ぬ時は何が自分にとって一番大切なのかということを考えるんですよ。この本はそれがリアルに出ていて、著者の梯さんの書きっぷり・取材もすばらしいですね。あと一冊はこの本にもかいている『それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条』です」

―最後に、今の20代・30代の方々にメッセージをお願いします。

佐々木「先ほどもお話した『仕事の進め方10カ条』にもありますが、自分が一番大切です。もっと自分を可愛がって、高めて、幸せになってほしい。それがこの本のメッセージでもあります。
幸せになるためにはどうしたらいいかといったら、真摯でいること、人を愛すこと、また仕事を通じて自分を磨くこと。それらによってどれだけ周りの人に愛されるか。それが自分の幸せとなって跳ね返ってくるんです。だから仕事は嫌な仕事でも難しい仕事を選んで自分を高め、世のため人のために仕事をしてください。それが結果的に自分の幸せにつながるのではないと思います」

■取材後記
 奥さんの看病をしながら家事・育児・そして仕事もこなしていたという超人的なエピソードにおよそ似つかわしくないほど、一見したところの佐々木さんは柔和な印象でしたが、お話をしていくとその印象は一変、情熱的な語り口で、よく笑い、こちらの話にも真剣に耳を傾ける、実にエネルギッシュで快活な方でした。
佐々木さんの新刊『働く君に贈る25の言葉』は、働く20・30代の誰もが悩むテーマについて的確なアドバイスを与えてくれます。仕事に、人生に行き詰まった時に是非読んでみてほしいです。
(インタビュー・記事/山田洋介)

■イベント情報
佐々木常夫氏×坂東眞理子氏特別授業「仕事と人生でいちばん大切なもの」が11月26日(金)17:30〜、東大駒場キャンパス交流ラウンジにて開催されます。参加者抽選(無料)申し込みは先はこちらから

(第1回 自分の価値観で行動するから若い人が離れて行く を読む)
(第2回 「プアなイノベーションより、優れたイミテーションを」 読む)


【関連記事】  元記事はこちら
これから衰退していくであろう企業に見られる兆候
会話の間が持たない人のための3つの方法
カリスマ経営者の残酷な“転機”
大企業に勝つヒントは中国にあり?

【新刊JP注目コンテンツ】
ドラッカー12年分の講義録(新刊ラジオ 第1258回)
ヒクソン・グレイシー、単独インタビュー動画を公開!