バツイチ子持ちの相手と結婚を考えている人にとって一番の心配ごとは、「相手の連れ子とうまくやっていけるのか」ではないでしょうか。

 血縁関係であっても子育ては難しいのに、他人の子供ならばなおさら。「自分になつかないのでは」などの懸念が浮かぶのも当然です。しかし「血の繋がりがないと家族じゃない」と思う人は、作家・本多孝好氏の最新作『at Home』を読んでみるといいかもしれません。
 
 本作は4つの家族像を描いた短編集。どの家族も非常にユニークで、たとえば『日曜日のヤドカリ』の主人公は、小学5年生の女の子がいるバツイチ女性と1年前に結婚します。連れ子である「弥生さん」と主人公は、お互いに敬語を使って会話をする間柄です。それだけ聞くと、義理の父と娘の間に流れる冷たい空気を想像してしまうかもしれませんが、2人の間にギスギスした感情は一切なく、実にほのぼのした関係を保っています。下記は「弥生さんに殴られた」と同じクラスの男の子とその父親が、主人公の家に苦情を言いに来た後の会話。弥生さんに男の子へ謝罪させた後、主人公はこう問いかけます。

「お父さんは怒っています。本当にグーで殴ったんですか?」
「ごめんなさい」と弥生さんは言った。
「何も付けずに?」
「はい?」
 弥生さんが俺を見上げた。
「素手で人を殴っちゃいけません」と俺は諭した。
「はい。反省しています」
「拳を痛めたらどうするんですか」
「はい?」
「手を出すなら、肘でやってください。腕を畳んで、こう、肩を始点にして突き出すんです。拳よりかたいし、上下左右、どの角度にも突き出せます。どうしても拳で殴るなら、せめてタオルを巻くとかしてください。指の骨は意外にもろいんです。一発でぶちのめしたいときは、手の中に何か握るといいです。それなら、タオルを巻いていても、結構ききます」

 義理の娘に対して父親顔をして厳しく叱責するわけでもなく、かといってしらじらしく娘の理解者を装うわけでもない。その代りに、腕を痛めない殴り方を淡々と娘に敬語で説くのです。それが親として正解なのかはわかりませんが、「義理の親子」という関係性において、この距離感はとても自然で心地がいい。

 本作中にはこのほかにも3つの家族像が描かれていますが、いわゆる「正常な」家族像はひとつも存在しません。血縁関係もないのになぜか"家族として"生活を送る犯罪者一家や、借金のカタに妊娠中の外国人女性と偽装結婚させられる中年男。そして、長年失踪していた父親と一年に一回だけ会話をする息子。明らかに、どれも一般的な「家族像」とはほど遠いにもかかわらず、なぜか妙に家族らしい。
 
 「あ、こんな家族がいたらいいな」と思う読後感といっしょに、これらの家族の共通点を振り返ってみると、現代の家族にはないものが見つかるかもしれません。



『at Home』
 著者:本多 孝好
 出版社:角川書店
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