「20代・30代には受難の時代」―東レ経営研究所・佐々木常夫インタビュー(1)

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 働いていたりすると、「今の仕事は自分に向いているのか?」「将来が不安だ」「そもそも仕事って何だ?」など、悩むこともしばしば。そんな時に、様々な苦楽を経験してきた年長者のアドバイスに耳を傾けるのはいいことです。
 『そうか、君は課長になったのか。』(WAVE出版/刊)がベストセラーとなった、佐々木常夫さんの最新刊『働く君に贈る25の言葉』は、働く若い世代なら一度は思い悩む仕事との向き合い方や将来についてのアドバイスを与えてくれるはずです。
 今回はその佐々木さんに、今の若い世代を取り巻く状況や、ご自身の著作についてお話を伺ってきました。


■自分の価値観で行動するから若い人が離れて行く

―本作『働く君に贈る25の言葉』は、佐々木さんから甥への手紙という形で書かれているせいか、読んでいて温かさを感じます。佐々木さんは冒頭で、今は20代・30代には受難の時代だと述べていましたが、どんなところでそれを感じますか?

佐々木「“失われた10年”が20年になってしまい、就職がなかなかできず、非正規社員が増えているというのが“受難の時代”の最たるものではないでしょうか。
非正規社員は年齢を重ねれば給料が上がるものではなく、不安定です。将来に対する希望を持つのも難しい。今や働く人の三分の一が非正規社員ですが、圧倒的に若い人に偏っています。そういう意味で生活設計・人生設計をするのが辛い状況にあります。
私達の世代は、日本経済が豊かになり続けている時代で生きてきましたが、今の若い人はそんな期待を持てません。そのせいか、私達の時は海外に出たい、などと言っていたのに、今の若い人はそういう希望も持てません。
社会がそういうモチベーションをトーンダウンさせているという意味で、私は気持ち的にも受難の時代なのではないかと思いますね」

―今20代の人は、物心ついたころからずっと不況の中を生きてきたことになります。そういった環境で育つのと、好景気だとか経済成長の只中で育つのでは、気質や性格に違いが出るものなのでしょうか。

佐々木「人間は環境に影響されますからね。周りを見ても幸せそうな人があまりいないのではないかと思うんです。昔なら人と会っても、本を読んでも、旅行をしても、私達は興奮して喋ったものでした。でも今は“それがどうしたの?”という冷めた感じです。自分を取り巻く環境の元気のなさが、そういうことにも繋がっているんじゃないかと思います」

―本作に登場する甥っ子さんは実在するんですか?

佐々木「甥はたくさんいるんですけど、この本に登場する遼くんにあたる甥はいないです。“こういう甥がいたらいいな”という私の願望ですね。本当は息子にしようと思っていたんですけど、それではいくらなんでも赤裸々すぎるんでね(笑)やめておきました」

―佐々木さんは最近の若い世代の特徴をどう捉えていらっしゃいますか?

佐々木「私はあまり世代別の差を感じない人間なんですよ。
もちろん違う時代を生きているわけですから世代によって少しずつは違います。でも基本的なところはあまり変わらないと思っています。だから我々の世代と他の世代を比較するようなことは私はあまりしません。今の若い人と話していても、その人の目線で話をしていくと、ほとんど私が若い時と変わらないという感じを受けます。だから世代論には与しないんです」

―先ほどおっしゃっていた“冷めた感じ”というのも、世代別のお話ではなくて今の時代を生きる人全体を指していらっしゃる、ということでしょうか。

佐々木「そうですね。ただ、会話をするチャンス自体が少ないんじゃないかとも思います。私の同僚は、最近の若い人は会社の人間と一緒に飲みに行かないって言うんですよ。
そういう人に私はよく言うんだけど“あなたは若い人と飲みに行って自分の話をしてるだろ”と。それじゃ誰もついてこないですよ。一緒に飲みに行ってその人の話を聞いてあげないと。
話を聞いてもらえるなら、飲み代だって年長者・上司が払ってくれるわけだからついてきますよ。“最近の若い人たちは”っていうような人は、自分の価値観で行動するから若い人が離れて行くだけの話だと思います。私は会社で20代・30代前半の人に声をかけて断られたことなんてほとんどないですよ」

■イベント情報
佐々木常夫氏×坂東眞理子氏特別授業「仕事と人生でいちばん大切なもの」が11月26日(金)17:30〜、東大駒場キャンパス交流ラウンジにて開催されます。参加者抽選(無料)申し込みは先はこちらから

(第2回 「プアなイノベーションより、優れたイミテーションを」 に続く)


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