“出版業界に明るい流れを作りたい”主婦の友社、新書市場参入の舞台裏と挑戦

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 10月6日、主婦の友社より同社初となる新書シリーズが創刊された。
 同日刊行された4冊のタイトルには全て『なくなる日』という言葉がついているが、その名の通り「○○がなくなる日」というテーマの元、「婚活」「暮らし力」「政治家」「末期がんの不安と怖れ」のなくなる日がそれぞれ書かれている。

 しかし、こうした華々しい創刊の舞台裏にあるのは“新書”を取り巻く過酷な環境である。
 1990年代に入り、「ちくま新書」(1994年)、「文春新書」(1998年)、「集英社新書」など、大手出版社の新書参入が目立つようになる。さらに2000年代には「ソフトバンク新書」や「幻冬舎新書」といった中堅出版社の参入、「PHPビジネス新書」などのテーマ別新書などが相次いで創刊、そのレーベル数は150を軽く超えている。

 ところが、以前から指摘されているように新書の市場自体はそこまで成長してはいない。出版科学研究所によれば、2008年の新書点数は前年比で6%増だったのに対し、総売上は4.7%減。この数値は新書バブルの崩壊の象徴として扱われた。
 こうした状況の中で、主婦の友社は新書市場でどのような流れを作ろうとしているのか。


■主婦の友社が新書に参入した理由

 「なくなる日」シリーズの編集長である主婦の友社の吉原秀則さんは、まず。新書参入の理由について次のように語る。

 「主婦の友社はかれこれ90年以上、実用書の出版社としてやってきて、実用書としての評価は既に得ています。しかし、これから先を考えたとき、これまでに付き合いのなかった作家さんや、経済評論、政治評論の方などと、様々な分野の本をやっていきたいというという想いがあり、新書という形として新たにレーベルを創刊することになりました」

 もちろん新書を創刊して、扱える分野の幅を広げただけではいけない。存続にはヒット作が必要である。吉原さん自身も、それは十分理解していると言う。

 「とりあえず今回、4冊でスタートしましたけど、11月、12月と出していく中でヒット作が出てこないといけませんね。今は創刊直後で、書店さんには良いスペースで展開してもらっていますが、やはり激戦区です。ヒット作が出ないとスペースを確保できませんし、どのようにしてヒットを作り出していくのか、それが私たちの一つの挑戦ですね」


■未来へ展望がある流れを出版業界の中で作りたい

 10月6日、「よりみちパン!セ」シリーズを発刊していた中堅出版社の理論社が、民事再生法の適用を申請した。この出版不況の中で、各社どのように自社の本を売っていくかが課題となっている。
 こうした出版不況という背景を抱える中で、吉原さんは主婦の友社新書に1つの命題を課す。

 「正直に言えば、この“なくなる日”というテーマはあくまでも1つの切り口なんです。だから、この新書シリーズを通していろんなジャンルの本を出していきたい。そうして、1つの流れを作れれば主婦の友社の幅も広がるだろうと思います。だから、そういった新しい、未来へ繋がる流れを作りたいですよね」

 また、この新書シリーズ創刊と同時に発表された“新書シリーズの電子書籍版の無料提供”。こちらは7月に同社から刊行された『セックスしたがる男、愛を求める女』と同様の形で、11月6日にシリーズ第2弾として刊行される『子どもの秘密がなくなる日』の全文が10月18日まで電子書店アプリ「主婦の友社書店」で無料公開されている。

 「既に成功例があるというのもあり、新書参入と同時に公開をすることにしました。来月刊行される本を選んだのは、予告編的な位置づけとしてですね。インターネットユーザーは意外と本が好きな人が多いので、親和性はあるように思いますよ」

 と吉原さんは語る。電子書籍や新書市場への参入と、「挑戦」を続ける主婦の友社。「新しい、未来へ繋がる流れを作りたい」というこの「挑戦」はまだ始まったばかりだ。


■“なくなる日”シリーズ、創刊ラインナップを編集長が紹介

 冒頭で説明した通り、今回創刊された主婦の友新書シリーズは“なくなる日”という共通テーマを持っており、普通の新書本とは一味違った、独自の切り口で読者を惹きつける。
 創刊ラインナップを吉原さんのコメントとともにお届けする。

□『「婚活」がなくなる日』苫米地英人/著
「苫米地さんがうち(主婦の友社)から本を出すのは初めてになるのですが、苫米地さん流に女性の婚活を批判している本ですね。『この人と一緒にいたいから結婚する』のではなく、結婚そのものが目的化していて『結婚式をあげるために婚活をする』という風になってきている。でも、それは本当の幸せではない。女性の幸せ=結婚という価値観に洗脳されているという指摘を本書の中でしています」

□『「暮らし力」がなくなる日』近藤典子/著
「この近藤さんという方はこれまでずっと主婦の友社でも実用書を執筆して頂いてきた方です。ただ本書は整理整頓の実例集ではなく、日本人の“暮らし”というものに立ち返り、日本家庭の危機を鋭く指摘する一冊ですね」

□『末期がん、その不安と怖れがなくなる日』樋野興夫/著
「著者は順天堂大学医学部の先生で、2年ほど前に“がん哲学外来”というものをやっていました。つまり、がんを哲学するということなのですが、余命を告知後、患者さんは死の不安や恐怖と戦っていかなければいけないわけですよね。でも、そうしたことをきちんとフォローするのも医療の役割です。この本では、そうしたことを念頭に置き、生きることに前向きになるような考え方を教えてくれます」

□『政治家がなくなる日』平野和之/著
「この平野さんという方は新進気鋭の経済評論家です。彼と話をしていて面白かったのが、彼は経済畑の出身で、プロの政治評論家ではないんです。だからこそ、極めてフラットな視点で日本の政治を見られる。数字で政治を見たりするので、その給与体系にもズバズバ物を言ってるんですよ。すごく分かりやすい本ですね」

 「まずはこの新書シリーズを定着させたい」と吉原さん。
 11月6日には、電子書籍として無料公開された『子どもの秘密がなくなる日』(渡辺真由子/著)をはじめ、新横浜ラーメン博物館館長の岩岡洋志さんが執筆した『ラーメンがなくなる日』など、4タイトルを刊行予定。

 激戦区の新書市場で主婦の友社はどのように展開していくのか、これからも注目したい。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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