デビューというのは決して忘れないものだ。そして、アルベルト・ザッケローニ監督の日本代表指揮官としてのデビューは、いきなり日本の歴史に刻まれることとなった。日本代表は8日の国際親善試合で、19分のFW岡崎の決勝点により、1−0と勝利を収めたからである。

ザッケローニ監督の日本代表は秩序立っており、本田や香川といった攻撃のタレントと、ザッケローニ監督がこの数日で力を入れていた守備の堅さによって支えられていた。アルゼンチンはバティスタ監督になって初の黒星。また、セリエAにも影響を及ぼすこととなった。インテルのFWミリートとMFカンビアッソがそれぞれ負傷で前半に交代を余儀なくされたからだ。

ザッケローニ監督の4-4-2において、2人の“イタリア人選手”も出場機会を得る。チェゼーナDF長友とカターニアFW森本のことだ。一方、3戦3勝を目指すバティスタ監督は、前線を重視した布陣。ミリートをCFとして、ダレッサンドロとメッシ、テベスがそれを支える形となった。そのほか、ローマDFブルディッソが右SBで、カンビアッソが中盤センターで(もう一人はマスチェラーノ)先発。ベンチにはカターニアGKアンドゥハール、フィオレンティーナMFボラッティ、パレルモMFパストーレ、ナポリのFWラベッシとMFソサも名を連ねた。

本当の勝負は最初の20分間にあった。まずはメッシが突破からループを放つが、ボールはクロスバーを越える。続いて9分、あとは押し込むだけというボールが右サイドの本田から送られるが、岡崎は合わせ切れなかった。だが19分、ホームの日本は先制する。本田が距離のあるところからシュートを放つと、GKロメロがこれを抑えきれず、岡崎が押し込んだ。日本のベンチは大喜び。特に、ザッケローニ監督が選手たちに指示を出すための通訳が喜んでいた。

アルゼンチンの反撃は、スポンサーのため、そしてバティスタ暫定監督に完全契約をプレゼントするために出場したメッシのプレーに託される。メッシは27分、ゴールマウス隅へと飛ぶフリーキックを放ったが、ネットは揺れなかった。

挽回を試みるアルゼンチンだが、2選手のケガに見舞われる。32分には、万全の状態ではないものの先発していたディエゴ・ミリートが離脱。バティスタ監督はイグアインとの交代を余儀なくされる。そして前半終了1分前には、カンビアッソがタオルを投げ、フィオレンティーナであまり起用されていないボラッティがピッチに立った。

後半、アウェーのアルゼンチンは同点ゴールを奪おうと焦ることなくスタートする。だが、メッシのペースは落ち、アイディアに欠けた。そのためバティスタ監督は60分、パレルモの天才パストーレに期待をかける。しかし、日本はザッケローニ監督のレッスンをよく学んでいた。栗原と今野のCBコンビがしっかり統率する非常に注意深いディフェンスで、疾風のようなアルゼンチンの攻撃を食い止めたのだ。

その後、テベスも同点に向けた最大のチャンスを無駄にしてしまい、バティスタ監督は75分、ブルディッソに代えてラベッシも投入。アルゼンチンは前へと出るが、相手を痛めることはできなかった。一方、日本は終盤にもカウンターから前田が追加点へと迫っている。

主審が試合終了のホイッスルを吹くと、スタジアムの声援は爆発。ザッケローニ監督は試合後、「難しい試合で、難しいデビューだった。だが試合前、私は選手たちに信じるように言っていたんだよ。こういったチームが相手であっても、争うだけのすべての力を持っているんだからとね」と話している。

日本では、彼のデビュー戦は長く記憶されることだろう。