“毎日挿絵がつくから、新聞連載が大好きなんです”―宮部みゆきさんが『あんじゅう』を語る(1)

写真拡大

 三島屋の行儀見習い、おちかのもとにやってくるお客さまたちの、温かく、ちょっと奇妙でぞおっと怖い百物語。宮部みゆきさんの新刊である『三島屋変調百物語事続 あんじゅう』(中央公論新社/刊)が好評だ。

 今回はそんな『あんじゅう』について、なんと作者である宮部みゆきさんにインタビューを行った。
 讀賣新聞に連載され、その物語もだけでなく挿絵も話題を呼んだほか、iPad対応の電子書籍版も発売された本作。宮部さんはどのような想いでこの『あんじゅう』を見つめているのか。3回にわたってお送りするインタビュー第1回目は、「挿絵」についてお話頂いた。


■物語だけでなく挿絵も魅力的な『あんじゅう』

―『あんじゅう』は讀賣新聞の連載が単行本化されたものですね。宮部さんはこれまでも多数の新聞で連載をなさっていますが、新聞連載はお好きなんですか?

宮部さん(以下、宮部)「大好きです。なぜかというと、毎日挿絵がつくから。挿絵って、月刊誌だと3点……週刊誌は毎回2点くらいかな……それくらいだけれど、新聞は毎日ですからね。頻度としてはゴージャスですよね。
私、子どもの頃は絵描きさんになりたいと思っていたんです。だから、何よりも毎日絵が見られるのが楽しみで楽しみで。でも、作者ばかりが楽しんでいると、作品が上滑りになってしまいがちですから、それだけは注意してくれるように担当の方にお願いしています。
執筆という点では、いつも1ヶ月ごとにまとめて(原稿を)お渡ししているので、特に他の連載とは変わらないかな」

―『あんじゅう』の読者さんのブログには、もっと長く連載して欲しかった!という声もありました。

宮部「わあ! 嬉しいです。でも、実はこれでも1ヶ月延長してもらったんですよ、お話が入りきらなくて(笑)。第4話(「吼える仏」)にかかったあたりで、『大変申し訳ありません、延長して頂けないでしょうか』って聞いたら、OKして頂けて。
あとね、この『あんじゅう』の連載中、今までで一番読者の方からお手紙を頂いたんです。そのときに、必ず書いてあるのが『絵も素敵、かわいい』って。絵について言及されていないお手紙やFAX、メールは1つもありませんでした」

―新聞をひらいたときに、今日は何の絵かなって探してみる楽しみもありますよね。

宮部「そうなんです。私も楽しみでしたもん。新聞ってその日によって連載小説の載る場所が違うんですよ。だから、普通ならまず1面を見て小説が載っているページ数を調べて、紙面をめくるんです。でも、この連載のときは、南(伸坊=イラストレーター)さんの絵を探せばいいじゃないですか。紙面をめくっていくと、南さんの絵がポーンと目の中に飛び込んでくるので、いちいちページを確かめなくても大丈夫でした。絵がピチピチしているんですよね」

―この単行本にも、絵がたくさん載っていて、すごく可愛いですよね。

宮部「ね! 単行本でこんなに挿絵を使ってもらえるなんて思いませんでした。単行本になるときに、入れたい絵を30点ほど選んだんですが、それだって全部入るとは思っていなかったんです。それに、こう、本文の中に枠をつくって「挿絵!」って感じで入ると思っていたから、こういう風に入るなんて。仕掛けたのはこの編集の名倉さんなんですよ」(宮部さんも驚いたという挿絵の入り方、是非書店などで手に取って確かめてみてください!)

―パラパラマンガみたいな感じで、この中でキャラクターたちが動きそうです。

宮部「そうなんですよね!」

名倉さん(以下、名倉)「実は、パラパラマンガにするか、こういう風にイラストをいっぱい入れるか、最後まで迷ったんですよ(笑)。くろすけに絞って、パラパラマンガにしても可愛いかもって」

宮部「あー、それもいいなあ」

名倉「本当にたくさんのイラストを入れたので、楽しく読んで欲しいですね」

(第2回:宮部さんの野望が語られる! 「宮部さんの野望は“一家に一冊、宮部みゆきの本”」へ


◆宮部みゆきさんプロフィール
 東京都出身。1987年、短編「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。88年『かまいたち』で第一二回歴史文学賞佳作入選。89年『魔術はささやく』で第二回日本推理サスペンス大賞、92年『龍は眠る』で第四五回日本推理作家協会賞長編部門、同年『本所深川ふしぎ草紙』で第一三回吉川英治文学新人賞、93年『火車』で第六回山本周五郎賞、97年『蒲生邸事件』で第一八回日本SF大賞、99年『理由』で第一二〇回直木賞、 2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、02年第五回司馬遼太郎賞、第五二回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、07年『名もなき毒』で第四一回吉川英治文学賞を受賞。

◆宮部みゆきさん朗読会のお知らせ
「大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき 自作朗読会 リーディングカンパニー Vol.9」
 直木賞作家3人による朗読会。同じ事務所に所属し公私共に仲の良い3人の作家…大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆきが読者との交流とチャリティーを目的に始めた年に一度の自作朗読会――「リーディングカンパニー」。9年目を迎える今回は、初めて3人共演の演目に時代物をチョイス。宮部が書いた泣ける短編を3人がどう声で演じるのか…。そして複数の配役をどう演じ分けるのか…。今回も期待と不安がふくらみます(笑)。普段はお目にかかれない作家の素顔に接するまたとない機会。ぜひ足をはこんでみてくださいませ。

【公演日時】
2010年11月6日(土)昼夜2回公演

【チケット取扱い】
朗読会の詳細・チケットの購入は「チケットぴあ」から
http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1043375&rlsCd=001


【関連記事】  元記事はこちら
「道尾秀介はどうして「子ども」を主人公に据えるのか?」―道尾秀介さんインタビュー
「男はええかっこしいで孤独な生き物」―渡辺淳一さんインタビュー
第143回直木賞受賞!中島京子さんに聞く『小さいおうち』の原点

【新刊JP注目コンテンツ】
話題の作家のインタビューが読める!「ベストセラーズインタビュー」
渡辺美智雄、渡辺喜美の人物伝(新刊ラジオ 第1248回)