イタリアではラツィオ、スペインではバレンシア、フランスではレンヌといった“アウトサイダー”たちが、ドイツでは無名だったマインツが首位に立つ欧州各国リーグ。イングランドでも首位チェルシーに4ポイント差でマンチェスター・シティが肉薄する中、無敗で首位に立つポルトガルのポルトは例外と言えるだろう。だが、彼らが特別なのは順位表の上でだけの話ではない。わずか33歳のアンドレ・ビラス・ボアス監督の存在が特別なのだ。

リーグ戦7試合で6勝1分と無敗を誇り、ヨーロッパリーグでも4戦全勝。好成績を続けるビラス・ボラス監督が比較されるのは、同じポルトガル人のジョゼ・モウリーニョ監督だ。ただそれは、国籍が同じだからというだけではない。モウリーニョ監督がポルトで2003年にUEFAカップを、04年にチャンピオンズリーグを制したときから、ビラス・ボアス監督は“スペシャル・ワン”のアシスタントだったからである。

ビラス・ボアス監督はバルセロナ在住時代、当時近所に住んでいたバルサのボビー・ロブソン監督の自宅に、現在ブラガを率いるドミンゴス・パシエンシア監督をよりケアすべきだとの手紙を送った。この“アドバイス”により、ビラス・ボアス監督はわずか16歳でスカウトとしてロブソン監督のスタッフ入りを果たす。そしてここで、ボブソン監督のアシスタントだったモウリーニョ監督と知り合った。

モウリーニョ監督はポルトの指揮官に就任すると、ビラス・ボアス監督をスタッフとして加え、数々のトロフィーを獲得。その後もチェルシー、インテルでビラス・ボアス監督はモウリーニョ監督とともに冒険を続ける。そして昨年、ビラス・ボアス監督は若干31歳でアカデミア・デ・コインブラの指揮官に就任。7試合を終えた時点での就任で、目標は1部残留だった。だが、最終的に11位となったことで、ポルトの幹部たちがビラス・ボアス監督の招へいを決めたのである。

ビラス・ボアス監督は「私は誰のクローンでもない」と強調する。しかし、王者ベンフィカとのスーパーカップを2−0で制し、国内外で無敗を続け、厳しい戦術を採用していることから、モウリーニョ監督、もしくはバルセロナのペップ・グアルディオラ監督との比較は避けられないだろう。

インタビューには応じず、記者会見を“ショー”に変え、選手の退場や相手に有利なジャッジに関して審判団を批判する…読者のみなさんも、誰かのことを思い出すのではないだろうか?