トヨタ自動車の軽自動車参入は市場に強烈なインパクトを与えることになりそうだ。トヨタはこれまで排気量660CC以上の登録車にラインアップを限り、グループのダイハツ工業とすみ分けてきた。しかし、新車市場の3台に1台以上が軽自動車となり、今後も経済情勢からますます支持が高まりそうな状況にあってディーラーと客の要望が強く、ついにダイハツからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて「トヨタバッジの軽」を売り出すことになった。

   豊田章男社長は2009年6月の就任会見で「国内は軽自動車、中古車を含めた年1200万台の市場でビジネスを考えていく」と表明、軽進出へ調整を進めていた。

年6万台の販売を見込む

   「トヨタの参入は脅威だ」。スズキディーラーはトヨタの軽参入に強い警戒感を示す。トヨタは2003年以降、ダイハツとの協力関係でダイハツの軽を販売してきた。ただし、これはトヨタディーラーがダイハツディーラーを通じて車を仕入れる「業販」形式で、ショールームへの車やカタログ展示もなく販売は年3万台にとどまっていた。

   今回、メーカー同士が提携したことにより、トヨタディーラーはトヨタから車を仕入れる正常な形になり、営業活動もカローラやヴィッツと同じように行う。トヨタは3車種が揃った時点で年6万台の販売を見込む。

   圧倒的な販売力を持つ巨人トヨタが軽市場に乗り込む影響は測り知れない。軽市場は168万8千台(2009年)のうちダイハツのシェアが34・8%、スズキが32・7%と7割近くを2社が占め、3位ホンダ(9・6%)以下とは大きな開きがある。すべての乗用車メーカーが軽自動車を持つことで淘汰の波が押し寄せるのは間違いない。

自社生産するホンダ、三菱自はどうなる

   ダイハツの伊奈功一社長は共同会見で「競争は激化するだろう。その点は承知している。ただ軽自動車自体の存在感が増す可能性もある」と語った。

   前出のスズキディーラーは「市場がふくらむ時期ではないからパイの奪い合いになる。『トヨタの店ですべて済む』というように客の流れが変わる可能性があり、とくに地方のオーナー経営のディーラーは厳しくなるだろう」と見る。

   とりわけホンダ、三菱自動車、スバル、マツダの軽依存度が高い小規模ディーラーにとって死活問題になると見られる。そのうちスバルは軽自動車の自社生産を順次打ち切り、ダイハツからの調達に切り替える最中だけにトヨタともろにぶつかることになる。自社生産するホンダ、三菱自も軽自動車戦略の再考を迫られそうだ。

   日産自動車が2002年に三菱自、スズキからのOEM調達で軽自動車市場に参入したインパクトは大きかった。販売力の強さで2007年には三菱自とスバルを抜き去って4位になり、3位ホンダに迫った。シェアが低下したスバルは自社開発・生産からの撤退を決断した。トヨタの販売力は日産の比ではない。トヨタ参入がさらなる自社生産撤退を招いたとしてもまったく不思議ではない。

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