前回前々回と、注目の新刊『孤舟』(集英社/刊)への思いを、著者の渡辺淳一さんに伺ってきた。
 ところで、渡辺さんは40年近い作家生活で数々のベストセラー作品を持っているが、昔書いた作品を読み返したりすることはあるのだろうか。
 今回は作家になったきっかけや、ご自身の作品への思い入れなど、渡辺さんご本人についてお話を伺った。


■何歳になっても柔軟に自分を変えていってほしい
―渡辺さんが小説を描き始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか。

渡辺「小説を書く前は医者をやっていたんだけど、医者の仕事のおかげで様々な人の生き様と死をたくさん見せてもらうことができました。その経験から人間というものについて考えさせられて非常に勉強になりました。
それに医師は自分が担当している患者さんを治すことしかできませんが、小説ならもう少し広く、問題を抱えた様々な人に訴えかけることができる。自分の影響力が及ぶ範囲が広がるという意味で、やってみようかなと思ったわけで」

―医師のお仕事の延長線上に小説があった、と。

渡辺「そうですね。医師の仕事を通して人間の本当の姿、死んでいく時の姿やその時の苦しみや迷い、悩みを見せていただいたことで、人間についていろいろ考えさせていただいた、それは大きかったです」

―医師から小説家という転身を経験された渡辺さんですが、そういう発想になるということはかねてから本や小説がお好きだったのでしょうか。

渡辺「もちろん好きでした。若い時はカミュが好きでした。日本の作家はあまりいなくて川端康成さんくらいかな。あとは大した人はいないと思ってた(笑)」

―医師を志したきっかけは何だったのでしょうか。

渡辺「僕は、初め、文学部に行こうと思っていたんですが『文学部じゃ食べていけないよ』と言われて医学部に入ったんです。そうしたらひどく面白い学問で感動しました。それに、親戚にも医師がいましたから」

―渡辺さんは作家としてデビューされてから、40年近く経ちますが、デビュー当時の作品を読み返されたりすることはありますか?

渡辺「あります。自分が生んだ作品だから皆かわいいけど、自分なりに今読んで不満だとか、書き足りてないな、とかいろいろ感じることはあります。今ならこうは書かないというのもあるし、割と良く書けているなと感心するのもあるけれど」

―特に気に入っている作品はありますか?

渡辺「『失楽園』なんかは男女の愛をよくあそこまで書ききれたと、当時の気魄を懐かしく思い出したりします」

―今後の執筆予定などがございましたら、可能な限りで構いませんので教えていただければと思います。

渡辺「今は文藝春秋本誌に『天上紅蓮』という平安朝の華麗な恋の絵巻を書いています。それから雑誌の『エクラ』で『事実婚のススメ』というエッセイを連載しています。それらもぜひ読んでいただけると嬉しいです」

―渡辺さんが、人生に影響を受けたと思う本がありましたら3冊ほど紹介していただけませんか?

渡辺「僕は文学書よりも医学書の影響を大きく受けました。例えば『解剖の図』とか『診断学』など。『解剖の図』はここにはこういう動脈が走って、その動脈はこう枝分かれして静脈と繋がってその横にこういう筋肉があって…という全身くまなく記されていて実に見事でした。でも僕は血管分布はみんな同じなのに、どうして頭の良し悪しの差が出るのが不思議だった。頭が弱いから血管足りないかといったらそうではないし、背の低い人も筋肉や神経が足りないわけではない。どうしてこんなに成長や能力の差が生まれるのか、ということをいろいろ考えさせられました。
『診断学』については、こういう症状だからこういう病気だよ、というのが診断学だけど、人によってはその症状が出ない人もいて、それも不思議でしたね。ある薬がA君にはよく効くけどB君にはあまり効かないとか。その辺の偉そうな作家の本なんかよりもよほど医学書の方が人間について考えさせてくれます」

―最後に、本作で取り上げたような、定年退職後の方々にメッセージがありましたらお願いします。

渡辺「ぜひこの本を読んで柔軟な生き方、新しい生き方を探ってほしいですね。地位や過去にこだわらないで自分を変えることが大事。何歳になっても柔軟に自分を変えていってほしいですね」

■取材後記
 30年以上、文壇の第一線で活躍されてきた方だけに、その貫禄に圧倒されっぱなしの取材だった。インタビューでおっしゃっていたとおり、私には定年後の人生については想像もつかないが、“団塊の世代”の方々が抱える孤独の一端は、本作『孤舟』を読むことで理解できたように思う。
 60歳を過ぎてから、それまでの自分の生き方や考え方を見直すことは非常に勇気のいること。何歳になってもしなやかで柔軟な考え方ができる人間でいられるために、本作は若い世代にとっても示唆に富んでいる。
(取材・記事/山田洋介)

■渡辺淳一さんのサイン入り『孤舟』をプレゼント!
 今回登場して下さった渡辺淳一さんの
直筆サイン入り『孤舟』
を抽選で1名の方にプレゼント致します。件名に「渡辺淳一さんのサイン本」、本文には名前とインタビューの感想を明記の上、ご応募ください。返信をもって当選メールとさせて頂きます。(締切りは2010年10月16日)

【宛先】
news@sinkan.jp

※預かった個人情報は本プレゼントに関わる連絡のみに使用します。 それ以外の目的では利用いたしません。また、本企画が済んだ以降は、個人情報は保持いたしません。

(第1回 男はええかっこしいで孤独な生き物 を読む)
(第2回 定年を迎えてしまったら、会社での地位は何の役にも立たない。 を読む)


【関連記事】 元記事はこちら
「既成概念を打ち破るリーダーの登場を育てたい」 心拓塾の主宰者・秋沢志篤氏の新刊が登場
女優・杉田かおるが10キロ痩せたダイエット法を伝授
アイドルからAV女優へなった理由とは?『本名、加藤まい〜私がAV女優になった理由〜』著者・原紗央莉さんインタビュー

【新刊JP注目コンテンツ】
風水を活用した、受験・資格勉強を成功させる環境づくり!!(新刊ラジオ 第1238回)
加ト吉の広報部長さんのツィツター生活を大公開!(新刊ラジオ 第1237回)