【斉藤アナスイの論議】斉藤論

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「稲荷さーん、稲荷さーん」

歯医者にて自分の番を待っていた僕は、その声を聞いてハッとした。「…お…稲荷さん?」。一人の男性が受付へと向かう。あぁ、そうか。名前を呼ばれたのだ。彼が稲荷さんなのだ。そして、その一連の流れを見て僕は思った。

「…そ、その名字!超羨まっすぃー!」

く、くそ…!僕が稲荷という名字だったら、「おいなりアゲアゲー!」というギャグで一躍人気者になれるのに…!

僕の名字は「斉藤」である。多い多いと言われるわりに、意外と日本10位ぐらいだったりする、あの「斉藤」である。そう、かなり普通なのである。


僕の小学校の頃のあだ名は「斉ちゃん」だった。なんの捻りもない。斉藤だから斉ちゃん。他の人のあだ名を羨んだことは、1度や2度のことではない。

だから中学校に入るとき、僕は同じ過ちは繰り返さないと決めていた。キャラクターを作ろう。そしてそれをあだ名にしてもらおう。もう「名字→あだ名」の流れは卒業するのだ。

当時、なぜか猛烈にタモリに憧れていた僕。名字は斉藤だけど、僕も「タモさん」と呼ばれたい…!そんな強い思いから、僕は昼休みになると消える(トイレに隠れる)という行動を繰り返した。(「何かあいつお昼いつもいないよね?」→「もしかしてタモリなんじゃね!?」→ゴール)

そしてついたあだ名が「茂吉」だった。えええええ。や、やっぱり斉藤の呪縛からは逃れられないのか…!しかも茂吉て!斉藤って確かにパッと浮かぶ有名人少ないけど…だからって茂吉て!お昼に消えたのに…!担任に呼び出され「お前、なんか悩みとかあるのか?」とまで言われたのに…!

「さいとうの『さい』の字は?」

そんな質問をよくされる。斉藤はまた、ベタな割にパターンがあるからタチが悪い。つまり、「斉藤」か「斎藤」か「齋藤」か。全国のさいとう連合(SI-REN)ではそれぞれ、

斉藤→あ、あの1番簡単なやつでいいです!
斎藤→あ、あの2番目に簡単なやつです!そう、示すみたいな!
齋藤→あ、あの1番難しいやつです!なんか見た目ガンダムみたいな!なんか面倒くさくてすいません!

と返事が明確に決まっている。ただ、僕ビックリしたことがあって。今も「斉藤」って書いてるし、まぁずっと「斉藤」だと思って生きてきたんですけどね、パスポート見たら「齋藤」だったんですよ。本当は。ガンダムの。で、親に聞いたら

「え?うん、『齋藤』だよ。面倒だから『斉藤』って言ってるけど」

との返事。衝撃だった。ずっと信じてきた自分の名字が、まさか違っていたなんて。ってゆうか名字ってそんな適当な感じで扱っていいの?そして僕は、この字に馴染みがなかった。「齋」?書けない。中学生なのに、自分の名字が漢字で書けない。これはかなり恥ずかしいことである。「え、何これどうなってんの?」

そんな僕に対し、親が見かねてペンを取るが「何か違うかも…」。実に驚きだが、親もまた「齋」の字が書けなかったのだ。親も「斉藤」に慣れ過ぎていて、また「齋藤」と書かなければいけないような場面でも、速記風に書いて細かい所をごまかすということを繰り返してきたため、正しい字が書けなくなっていたのだ。家族揃って自分の名字を漢字で書けない。何この一見明るいけど複雑な家族環境。フルハウス?

いじりづらい。個性がない。そう、「斉藤」という名字は苦しい。だから、僕は変わった名字への憧れが人一倍強いのだ。それだけで覚えてもらえる様な、それだけでキャラクターが出来るようなそんな名字。そんな名字が、羨ましくて仕方がないのだ。例えば冒頭の稲荷のような。

変わった名字の人は、それはそれで違った苦労があるのだろうか。ただそれは、斉藤には知る由もない。

(テキスト&イラスト 斉藤アナスイ)






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