第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞した伊予原新『お台場アイランドベイビー』が発売された。「下読み中、夜中に原稿を抱えて号泣した」とは、担当編集者のコメント。最近ではめずらしい、骨太の大型冒険小説だ。

 小説の舞台は、経済破綻で三流国に転落した近未来の日本。臨海副都心直下を震源とするマグニチュード7.5の東京湾北部地震により、120万棟が全壊または焼失、600万人が被災。4年後の今も復興は遅々として進まず、地下鉄網は運行を停止している。岩佐紘一郎都知事は、強力なリーダーシップを発揮して、拳銃の携帯を認めた「国土復興協力隊」を創設。戒厳令にも等しい体制のもと、治安回復につとめている。

 主人公は、元刑事の中年男、巽丑寅(たつみ・うしとら)。たまたま知り合った黒人少年・丈太が「震災ストリート・チルドレン」の失踪と関係していることを知った巽は、品川署生活安全課で少年係の係長をつとめる元上司の鴻池みどりとともに、彼らの行方を追う。やがて、巨大な陰謀がじょじょに姿を現してくる......。

 導入は藤崎慎吾『ストーンエイジCOP 顔を盗まれた少年』(光文社)を思わせるが、クライマックスは「機動警察パトレイバー the Movie」並みの派手なスペクタクルが展開する。まだ荒削りな部分もあるが、これからが楽しみな新人の登場だ。

(大森望)







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