小林虎三郎の「米百俵の教え」ではないが、インテリアビジネスのすそ野を広げていくためには、やはり「教育」という観点が必要不可欠である。欧米では幼少の頃からインテリア教育が実施されているように、特に若年層への教育は、インテリア業界に有為な人材を供給することはもちろん、将来のマーケットに優良な顧客を創出するという観点でも重要度は高いだろう。
そうした日本のインテリア教育の最前線に位置するのが、全国に33校ある高等学校のインテリア科だ。本紙では、そのうちの一校である千葉県立市川工業高校のインテリア科にお伺いした。
 市川工業高校は機械科、電気科、建築科、そしてインテリア科の4つの科からなる工業高校である。その中でもインテリア科は、約70年前の同校創立当初の木材工芸科から続く歴史ある学科で、2010年秋に開催される千葉国体用炬火トーチのデザイン依頼を受けるなど、地元では知られた存在だ。男子生徒が圧倒的に多い同校にあって、女子生徒が大半を占めているのもインテリア科の大きな特徴である。
「高校にインテリア科というものがあり、若い子たちがインテリアの世界を目指してがんばっていることを、もっと企業の方に知っていただきたいと思っています」と語るのは、市川工業高校の村川剛啓教諭である。
同校のインテリア科の授業は、家具製作を中心とする「木材工芸」とデザインなどソフト面を学ぶ「インテリアデザイン」を二本柱に行われている。
具体的なカリキュラムの内容は、1年生で工業技術基礎やインテリアエレメントの基礎知識などものづくりの基礎を学び、2年生で家具製作、デザイン基礎、製図などインテリアの各分野を幅広く学習する。そして3年生になると「ファニチャーコース」「デザインコース」など専門分野に分かれて本格的な実習が行われる。
また3年生では、一年間を通して「課題研究」に取り組み、年度の最後には「課題研究発表会」を行い、プレゼンテーションをしながら成果を発表する。この他にも、授業の一環として、「デザイン選手権」など各種コンテストへの参加や、色彩検定、インテリアコーディネーター資格試験、リビングスタイリストといった資格取得のチャレンジも行うなど、かなり専門的な教育が行われる。
こうしてインテリア科を修了した卒業生は、より専門的な知識と技術を身につけるべく大学や専門学校へ進学、そのうちの約半数がインテリアの世界へ進むという。未来のインテリア業界を担う人材を育てる教育機関として、高度で実践的な指導を行う市川工業高校。とはいえ、そこは県立高校の厳しいところで、予算に制限があるため、例えばCAD実習では古びたPCにフリーソフトを活用、製作実習に使う資材も一部企業から寄付を受けながら切り盛りしているものの、不足しているのが実情である。またどうしても教科書中心の勉強になるため、生徒の多くが、漠然としたイメージでしかインテリアの仕事を理解出来ないという問題もある。
「厳しい状況の中で運営していますので、是非とも企業さんのご支援とご協力をいただきたいところです。特に最前線の現場で仕事をしている方の声を伝えていただければ、生徒たちの目標がより明確になりますし、やる気にもつながってくると思います」
市川工業高校のインテリア科に限らず、全国のインテリア科は、少子化に加え、高校進学の普通科志向の影響があり、かなり厳しい状況に置かれているのが実情である。最盛期は全国に56校あったインテリア科も統合や廃科が続き、現在では33校まで減少してしまった。
全国のインテリア科を束ねる全国高等学校インテリア科教育研究会では、これまで地域ごとに行ってきた活動を、昨年より市川工業高校が事務局を担当してから全国組織に改編し、新たなスタートを切った。
「全国組織として活動することで、高等学校のインテリア科の発展と認知度の向上を目指します。当会の活動にご賛同いただける企業様におかれましては、賛助会員として入会いただければと思っております(全イ研・楚山修司理事長)」
こうしたインテリアの芽を育てていくために、インテリア業界として何が出来るのか、そして何をすべきなのか。資材提供、情報発信なども含め、インテリアビジネスの未来に向けた支援を、真剣に考える必要があるだろう。

*インテリアビジネスニュース(本紙)より