【斉藤アナスイの憧憬】英語への憧れ

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つい先日のことだ。

エレベーターの中は、僕と見知らぬおばさんの2人きりだった。僕らを乗せて、ゆっくりと1階を目指す。間もなくして「テぇン!」とふざけた音を出し、目的の階に着いたエレベーター。ドアが開き、ボタンの近くにいた僕は「開く」を押し、手で「どうぞ」と促した。しかしだ。おばさんもまた、「どうぞ」とこちらを促してくる。「気をつかわなくていいのよ」。そう言わんばかりに。いやいや、僕は再び「どうぞ」のジェスチャー。それにまた「どうぞ」と返してくるおばさん。ダメだ、これじゃ永遠に2人とも降りれない。そこで、僕は始めて声をかけることにした。

「どうぞ。レディーファーストですから」

顔をキリリと引き締めて。そう言い放った。そこでおばさんは大爆笑。狭い室内に笑い声がこだました。そして、その後のおばさんの一言は、僕の想像のはるか斜め上を行くものだった。

「あははお兄ちゃん、やぁねぇレディーだなんて!あたしなんかもうボーイよ!B•O•Y!」


ボ、ボーイ…!?そう言われては仕方がない。僕は泣く泣く先にエレベーターを降りた。…やっぱこの人も赤トンボとかに夢中になるのかな?そんなことを思いながら。

我々日本人は、英語に強くない。少なくとも僕は、中学、高校、大学と10年間もの間英語をしっかりと習ってきたにも関わらず、英語の「え」の字も理解できていない。

確かに、英語が得意という人はいます。留学していた、本気で勉強したなどの努力を経て、日本人でも英語がペラペラと話せる人はいます。でも、そういう人は一体全体のうち何%なのでしょうか。例えば僕のように、冒頭のおばさんのように。そんな英語がわからない人のほうが、遥かに多いのではないでしょうか。あの時、確かに勉強したのにも関わらず。

そしてここからは、我が家の母親の話。

我が家の母親は、何を思ったか50を過ぎてから英語の勉強を始めた。とは言っても、そんなに本気な話でもない。ペラペラ英語が話せるようになりたい、というよりもそんなことをしている自分が良いんだろう。冷蔵庫に覚えたい英単語を書いたメモを貼る。そんな風にして、ゆっくりと英語に触れていた。ある日、僕はそのメモをチラリと覗いてみたことがある。そこにはこう書かれていた。

「rabbit うさぎ」


それを見て僕は思った。「…小5か」
この人小5か。その姿勢は大いに評価できるが、いくらなんでもラビットて。いくら僕だって、それぐらいは知っている。ラ、ラビット!?そして2日後、新しく貼られたメモにはこう書かれていた。

「dwarf 小人」


それを見て僕は思った。「大変だ…!うちのババァ、不思議の国に行くつもりだ…!」。だってそれ以外に、ドワーフなんて単語を覚える必要性が見つからない。この人のレベルで、この単語を使う機会なんてまずないはずだ。でも、ドワーフ。今の所大人しく家にいるようだが、時がくれば彼女は穴に落ちるのだろう。あはははは。

そしてここからは、我が家の兄と母親の話。

実は我が家の兄は、先ほど述べた「日本人でも、ペラペラ英語がしゃべれる人」のうちの1人である。4年?5年?とにかく短くはない間、留学(逃避行)という名目でアメリカに住んでいた。

そしてそこで知り合った外国の友達を、一度我が家に連れてきたことがある。母親はもう大変。もともとそういった交流が好きな上、勉強している英語を試せる絶好の機会。そんな状況で、黙っている人ではない。ここぞとばかりに、母は兄の友達の外国人に英語で話しかけまくった。

母「ディス•イズ•チョウチン!」


そう言って家にあった「浅草」と書かれた土産物の提灯を、得意げに友達に見せる母。

友達「チョッチン?」
母「ノーノー!チョーチン!」


友達も困惑ぎみである。
「ねぇ提灯て英語で何て言うの!?」
伝わらないことに業を煮やしたのか、そこで母が兄に聞いた。しかし、兄はつまらなそうに「提灯は提灯でしょ」とバッサリ(英語の「Lantern」とはニュアンスが違うらしい)。確かに、と僕も何も言わずに頷いた。しかし母は、これに対し何を思ったのだか、

母「ディス・イズ・チョーチンワーチョーチンデション!」


とまさかの絶叫。これにはさすがに僕らも食べていたイクラを吹き出した。外国人の友達だけが、キョトンとしていたのを覚えている。


我が家の母を例に出すのはいささか反則な気もしますが、日本人の中で英語を自由に操れる人が少ないのは事実。それでも街中には英語が溢れ、例えば歌の歌詞一つとっても、もはや英語は欠かせません(そもそも「J-POP」がそうか)。そんな環境にあれば、僕だって、できれば兄のように英語をしゃべれるようになりたい。海外旅行がもっと楽しくなるから、自分の幅を広げたいから、とにかくカッコいいから。理由は様々あるでしょうが、とにかく英語への憧れを持っている方も少なくないはずです。

外国人は、日本人から見たら「なんで!?」と思うような漢字のタトゥーを入れることがあります。「侍」とかカッコいい漢字ならいいのですが、「台所」とか。「電卓」とか。今までで一番面白かったのは「二角形」ですかね。二角形て。そしてこれらは多くの場合、意味よりも漢字の見た目を重視しているからなのでしょう。まぁ確かに漢字の型ってすごいカッコいいんだけどね。でも我々としたら、やっぱり笑っちゃうじゃないですか。

でもね、でも僕の英語レベルだって外国人から見たら実際こんなもんだと思うんですよ。「Salamander」って書いてあるTシャツ見たら、なにこれカッコいい!と思うけど、和訳したら
「さんしょううお E(・-・)ヨ」
ですからね。そんなTシャツ絶対着ないでしょ。英語勉強したにも関わらず、この程度ですよ。英語ってなんて難しいんだろう。

最後に、我が家の兄の話。

ある日の晩、珍しく家にいた兄が、電子辞書を片手に頭を抱えていた。「マジで英語わかんねー」、そしてそんなことをポツリとつぶやいた。僕から見れば、兄はペラペラの人である。そんな兄がここまで悩むなんて。やっぱり英語って難しいんだな…。僕がただ「英語しゃべれるようになりたい」って思ったところで、何もしなければうまくなるわけないんだな…。そう思った瞬間だった。

兄「あーもう!『ペヤング』の『ぺ』って何!?」

ここまでいかないと英語がうまくならないと言うなら、僕には無理だ。そう思った。

でも、やっぱり英語ってカッコいいんだよなー。

(テキスト&イラスト 斉藤アナスイ)


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