「理系の学生が欲しい」

 ここ数年、色々な企業の採用担当者が、同じことを口にするようになっているそうです。

 そう話すのは、リクルートで採用責任者として活躍し、採用コンサルタントとして延べ数百社の企業を担当した辻太一郎氏。業種や職種にかかわらず聞かれるというこの言葉。営業でも経理でも人事でも、職種に関係なく理系の学生を求める声が高まっているのだとか。

 それはなぜでしょうか?

 理系の学生は、高校時代に文系科目より理系科目の方が得意だった。文系の学生は、理系の科目より文系科目が得意だった。その違いがあるだけで、両者に優劣があるわけではありません。それでも企業は理系が欲しいと言っているのです。

 あくまで一般論ですが、文系の学生と比較すると理系の学生は大学時代により多く勉強しています。実験や実習があるからです。しかもだいたいの実験というものは、一度でうまくいくことは稀。うまくいかないから、なぜ失敗したのかを考え、次はやり方を工夫する。理系にはそういった試行錯誤がつきものという印象があります。

 企業が理系学生を欲しがる理由はそこにあると辻さんは言います。理系の学生は日常的に自分で考えるという知的トレーニングを重ね、「自分の力で問題を解決する」経験を多く積んでいます。企業が欲しがっているのはその経験なのです。

 大学で得られる知識が、必ずしも仕事と関係するわけではないのは文系も理系も同じ。しかし「自分で考える」習慣の有無、「考えて問題を解決する」能力の高低は、どんな仕事でも重要です。

 企業が求めているのは「自分で考えることのできる人間」であり、「課題発見能力と課題解決能力を持った人間」と辻さん。ならば、学生時代からそのトレーニングを積んでいる理系の出身者を採用するのは、企業にとっては当然の帰結なのかもしれません。

 現在、企業の選考方法はひとつの袋小路に入り込んでいるそうです。学生への面接トレーニングの普及により、表向きの顔が均一化。その学生が、企業が求めている人材であるかどうかの判断がしにくくなっているのです。そこで企業が持ち出してきたのが「理系の学生なら自分で考える習慣がついている。考える力を持っている可能性が高い」という基準。

 確かに、ある面では理にかなった考え方ともいえますが、緊急避難的な匂いは拭い切れません。文系だからという理由で排除されては、文系学生に救いがないでしょう。文系の学生にも優秀な人はいるのですから。



『就活革命』
 著者:辻太一郎
 出版社:日本放送出版協会
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