iPadで楽しむ宮部みゆきの不思議な“百物語”
 「iPad」や「Amazon Kindle」などのタブレット型端末の出現や、iPhoneアプリの普及によって電子書籍業界が大きく伸びようとしている。
 先日も文藝春秋から綿矢りささんの新作『勝手にふるえてろ』が紙と電子版、同時に発売されたほか、120万部を突破した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/著、ダイヤモンド社/刊)の電子書籍版は5万ダウンロードを達成している。

 徐々にではあるが、しかし確実に人々の間に浸透しつつある電子書籍。だが、電子と紙、一体何が違うのか? 何が可能となるのか? その部分が、電子書籍が普及するかどうかの鍵を握る重要なポイントとなるだろう。

■中央公論新社『あんじゅう』の場合

 今回紹介するのは中央公論新社から出版されている宮部みゆきさんの新作『あんじゅう』のiPad用アプリケーションだ。

 『あんじゅう』は、江戸は神田三島町で袋物屋を営む三島屋の行儀見習い・おちかが、人々の不可思議な物語を聞く宮部流“百物語”『おそろし』の続編。『逃げ水』『暗獣』を含む4話が収録されている。
 
 このアプリケーションにはその『あんじゅう』から、「序 変わり百物語」と「第三話 暗獣」が抜粋されており、南伸坊さんの挿絵とともに『あんじゅう』の世界を楽しむことができるのだ。
 
【・『あんじゅう』iPad用アプリケーションの写真はこちらから

 画面上部に挿絵を、そして下部には巻物風になって文章が表示されるレイアウトとなっており、お話を読み進めながら、挿絵を見ることができる。
 

 また、その挿絵は、iPadの画面をタッチをしたり、機械を傾けたりすることで動く。まさに“動く絵本”のようなイメージだ。どこをどうすれば動くか、ゲーム感覚で遊ぶことができる。
  

 ちなみに「暗獣」には「くろすけ」というマスコット的キャラクターが出てくるのだが、物語上だけではなく、挿絵でも大活躍。ちょっと可愛い。どのような動きをするのかは是非、iPadの画面を見て確かめてみて欲しい。
 

 宮部みゆきさんの作品が電子アプリ化されるのは初の試みであり、Twitterとの連携機能を使えば、宮部さんのファンとコミュニケーションを取ることも可能。ゆるやかなコミュニティを築くことができる。

 ほかにも物語を楽しむ機能が満載だという『あんじゅう』iPad用アプリケーション。

 このアプリケーション最大の特徴は、物語そのものの楽しみ方の選択肢が大きく増えたということにあるだろう。本を読むのが苦手な人も挿絵から楽しむことができ、そこから紙の書籍に手を伸ばしてみることが出来る。また、紙の書籍で物語を楽しんだら、その挿絵でさらに楽しむことができる。もちろん同時に楽しむことも可能だ。料金は1000円(9月30日までは700円)

 この『あんじゅう』のケースを見てみると、もしかしたら、「紙」や「映像/画像」を超えた、全く新しいメディアとして捉えるべきなのかも知れない。
 これから更なるアプリケーションや電子書籍用の端末が開発されるだろうが、どのように発展していくのか。期待したい。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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