ゲゲゲの女房では水木しげる先生が大いにスランプに陥っている。しかし、ここで妖怪小豆洗いと出逢った。転機となるのであろうか。明日のゲゲゲの女房が待ち遠しくて仕方がない。小豆洗いに関しての講釈は既にさせていただいたので、そちらを読んでいただければ幸いである。

 水木イズム第八十八回。前回は「針女」と女に関する都市伝説の講釈をさせていただいた。今回は、折角なので小豆に関する講釈をさせていただくとしよう。そんな今回紹介するブロンズ像はこちら。

 これは「小豆はかり」という妖怪である。小豆洗いは小豆を川で洗う音をさせる妖怪であったが、小豆はかりは天井裏などで小豆をパラパラと落として音を立てる妖怪であるとされる。今では小豆というものは身近ではなくなってしまったが、昔は見渡せば小豆を取り扱っている人が居るぐらい身近なものだったのだろう。

 だからこそ、小豆を洗う音や小豆を落とす音が当たり前のように現れるのである。現代人がこんなことを言われても、いまいちピンと来ない。ゆえに小豆のモチーフは廃れていったのだと言える。だが、小豆はかりは小豆こそないものの、今でもそのモチーフは生きていると言える。

 それは音の展開である。小豆はかりは初めは軽く、気にならない程度にしか音を立てない。しかし、その音の大きさは放っておけばどんどんエスカレートしていく。最終的には一斗樽をひっくり返しているほどの大音量を響かせるのだからこれはたまったものではない。

 音がどんどんエスカレートしていく。これは人に恐怖感を与える構成として未だに有効なのではないだろうか。当紙記者は小豆はかりの音の展開をきいたとき、"ホテルのドアノック"に関する都市伝説を想起した。"ホテルのドアノック"をモチーフとした都市伝説は幾つかあるだろう。今回、想起したのは以下の通りである。

 出張先のホテルにて、男は仕事を終え部屋で寛いでいた。シャワーを浴びてバスローブに着替え、後はもう寝るだけである。そんな静寂の中、コンッとドアがノックされた。ルームサービスも頼んでいないというのに誰が来たのだろう。男はそっとドアに近づき、覗き穴から様子を見る。しかし、誰も居ない。

 イタズラだったのか。そう思って、ソファーに戻ろうとすると、コンッコンッと再びドアがノックされる。今度は急いでドアを開く。しかし、やはり、誰も居ない。背中に水をかけられたような嫌な感覚が染み渡る。

 それでもドアを閉めた。開けっ放しにしておくわけにもいかない。明日も仕事だ。もう寝ようとベッドに戻ろうとすると、コンッコンッコンッと三度ドアがノックされた。これは確定だ。人ではないものがそこにいる。男はそう確信した。
「何か御用ですか。はいなら一度、いいえなら二度。ドアをノックしてください」
 男はたまらずそう聞いた。するとドアは一度だけノックされた。
「私に何か御用ですか。それは今でなければならないことですか」
 ドアのノックは再び一度。男は困った。それでも質問を続ける。
「私はもう寝なければいけません。明日ではいけませんか」
 明日の午後には出張を終えるのだ。このホテルに来ることはもうない。しかし、ドアのノックは無情にも再び一度だけだった。
「仕方ありません。それでは少しお相手いたします。あなたは私のお知り合いですか」
 ドアのノックは二回。
「ならば知り合う必要がありますね。あなたは男ですか」
 ドアのノックは再び二回。
「それではあなたは女なのですね」
 それでもドアのノックはやっぱり二回。
「それはどういうことなのですか。あなたは男でも女でもないのですか」
 少し間をおいてから、ドアのノックは二回鳴った。
「なるほど。もしかして、あなたは一人ではないのですね」
 軽快にドアのノックが一度鳴らされた。
「そうなのですか。では、何人ほどいるのですか。居るだけノックしてくださいますか」
 ドアが一度ノックされる。二度、三度、四度。ドアのノックは止まらない。徐々に徐々に強くなっていき、同時にノックする手の音も増えている。ドアを破壊してしまいそうなほどの勢いで、終わることのないドアノックの雨は夜が明けるまで続いた。

 これが想起された"ホテルのドアノック"である。正に小豆はかりの音のモチーフと似通っているだろう。こうした音への恐怖感というのは古今東西変わることがないのかもしれない。ある映画監督は音響だけで人を泣かせることも笑わせることも驚かせることも可能だといった。

 音は人の魂に何かを語りかけることの出来る要素なのである。だからこそ、妖怪は音に宿るのかも知れない。妖怪は此岸より彼岸の生き物である。物質的なものより精神的なものなのであるからして、その媒体も精神的な要素の強い音に宿るというのは当然なのかも知れない。

 妖怪を知ることは、すなわち、人類の魂を知ることなのである。


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水木イズム バックナンバー
第八十三回「たんころりん」
第八十四回「畳叩き」
第八十五回「ひょうとく」
第八十六回「針女」
第八十七回「倉ぼっこ」

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