2008年にデビューし、たった2枚のアルバムで一躍世界的スターの仲間入りを果たしたレディーガガ。その奇抜な衣装と耳に残るダンスミュージックで世界中にファンを持つ彼女ですが、ガガの実像を自叙伝的にまとめた『レディー・ガガ』の著者ブランドン・ハーストは、「ガガの音楽は、ある側面からみると平凡な製品といえるかも知れない」と述べています。「彼女と同じくらい才能を持ち、同じようなパフォーマンスをするアーティストは何百といる」と。

 確かに、単に歌がうまくて衣装が奇抜な女性アーティストならいくらでも思い浮かびます。一時期類似が指摘されていたクリスティーナ・アギレラなどもそのひとりでしょう。ではどうして、彼女はこれほど短期間で人々の心を捕えることに成功したのでしょうか。

 著者はその理由を「人々の彼女が何者なのか知りたいという欲求」によるものであり、そしてそれはあらゆる人々がインターネットにアクセスするようになった現代ならではのものなのだと指摘しています。

 パパラッチに執拗に追いかけられるガガは、どこで誰と何をしているか常に知られており、それらの情報はインターネットですぐに手に入れることができます。しかし、そうして得られる彼女の秘密は「どこかふわふわとした曖昧さ」があるといいます。それを象徴しているのが、人々を驚かせ続けるあの衣装です。

 裸に近い全身タイツのような服から、体を覆い隠してしまうきらびやかなドレスまで「全てに図像学的な意味が込められている」と本人が語るガガの衣装は、そういった芸術的な意図が分からなくても見る人に衝撃を与えます。驚いた人々はすぐに彼女についてネットで調べますが、そもそも衣装の芸術的意味が分からない人には、どれだけ調べてもそのような格好で人前に出る意図はわかりません。なので、その意図を巡ってより多くの議論がネット上で生まれることになります。

 また、「レディーガガ」について検索するとすぐに次のような「事実」が分かります。「バイセクシャルで男女の恋人がいる」「無名の頃は全米屈指の芸術大学に通いながらもストリップで稼いでいた」「両親はセレブの大金持ちであり、娘がレディーガガになるなど想像もしてなかった」等々。これらの情報は本人によって語られたものと本書にも記載されていますが、あまりにも出来過ぎたストーリーのため「本当なのか?」と疑う人が後を絶たないそうです。しかし一旦疑ったら最後、その人は「レディーガガについてもっと知りたくなる」とも言われています。

 ガガの魅力に取り憑かれた人々は、彼女について新しい情報が与えられる度にそれが嘘か本当かを知るため、更に多くの情報をネットで検索し議論します。そうして彼女は、自身のプロモーション能力を超えた速さで世界中に知られるようになったのです。

 嘘と本当の境界を曖昧にすることで人々の「知りたい欲求」を挑発するガガの魅力は、まさしくインターネット時代に相応しいものであり、音楽以外の分野にとっても学ぶべきことが多いのではないでしょうか。



『レディー・ガガ』
 著者:ブランドン ハースト
 出版社:マーブルトロン
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