2003年の新学期から2008年までの5年間、杉並区立和田中学校の校長を務めた藤原和博さんは、人生をゴルフに例えて次のように語っています。

 これからの時代は、同じ会社に定年までいるというのが非常に困難な時代。おそらく半分の確率で合併が起こり、半分の確率で外資系になっていき、いきなり上司が外国人になる可能性もある。すべてのものが多様化し、変化が激しくなるので「これしかない」と決め打ちすると、非常に生きにくい時代になる。

 例えるならゴルフ場のショートホールに霧がかかっているような状態。普通なら晴れ間を待って打つのだが、それが期待できないのでとりあえず前に向かって打ち出さないといけない。さらに言うと、打ち出した瞬間にホールの位置が動いてしまうぐらいの時代なので、ホールのありかはグリーンに上ってみないとわからない。

 そんな状況だからもう打ち出すしかないのに、ほとんどの人がまだクラブを選んだり、風向きを調べたり、キャディさんに質問して時間をかけている。

 そこに何もしらない無邪気な子どもが来て「ぼくもゴルフをやる」と言って、パーンと打ち出す。コロコロ転がっていくボールが何打目かでグリーンをとらえ、また無邪気に試行錯誤でコロコロ転がしているうちに、ホールの近くまで行く。打数を気にせず、パッパパッパ打ってカップインさせ、子どもは次のホールへさっさと行ってしまう。一方、ティーグラウンドに立っている大人は、30分たってもまだ振らないでいる。

 どっちが勝ちだと思いますか? 

 人生は1つのホールでは終わらないのです。しかも18ホールなのか、それ以上なのかもわからないのが今の状況です。それならとりあえず次に進まなければ。子どもは打っているうちに、どれぐらいの強さで打つとどれぐらい飛ぶかを、どんどん習得していきます。打った方が勝ち、手数を出した方が勝ちなのです。仕事も同じで、さっさと始めて100回修正していった方が、絶対に状況ごとの最適な解答にたどりつくと藤原さんは言います。
 
 この一歩を踏み出すきっかけは「勇気」と呼ぶにはかっこよすぎるとして、今、求められているのはある種の「無謀さ」だと指摘しています。始めたあとに修正するときは計算した方がいいのですが、始める前はあまり計算しない方がいい。

 その理由はというと、「しょせん正解はない」からなんだとか。やってしまってから納得する。失敗したくなければ無限に修正をかけていけばいい。まずは小さく始めてどんどん修正していくことが大切だと説きます。

 リクルート出身の藤原さんらしく、ビジネスでも学校でも大切なのはスピード。そして人生のどんな局面でも「やわらか頭」をもって柔軟に修正していけば、必ず進路は切り開けると考えているそうです。

 NHKの教養番組「仕事学のすすめ」は2009年4月の放送開始から、トップリーダーの仕事哲学や仕事術をじっくりと本人の言葉で聞けるとあって、ビジネスパーソンの間で人気の番組です。2009年度に登場した柳井正さん、勝間和代さん、佐藤可士和さん、藤原和博さん、佐々木常夫さんほか、数々のトップリーダーの仕事術を読みやすくまとめたビジュアル・ムック『トップリーダーの仕事学』には、混迷の時代に生きる30〜40代のビジネスパーソンにとって、自分の仕事の向上に大きなプラスとなる"言葉"がたくさん詰まっています。



『トップリーダーの仕事学』
 著者:NHK「仕事学のすすめ」制作班
 出版社:NHK出版
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