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勝利の栄光まで、あと一歩

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お盆休み明け最初の週末、後楽園で行われるシーズン最後の伝統の一戦は、首位に立つタイガースを3ゲーム差で追う2位ジャイアンツが本拠地で迎え撃つという最高の構図で始まった。
終わってみれば投打にジャイアンツがタイガースを圧倒して3連勝。両チームのゲーム差はなくなった。

ジャイアンツにしてみればまずもって最高の結果といえる。しかしこの3連戦、首位攻防戦というシチュエーションの豪華さと相反して、どことなくしまりのない展開が続いたように感じたのは筆者だけだろうか。いずれのゲームも、序盤でリードしたチームがそのまま逃げ切るという、スリリングな展開に乏しかったことが要因なのだが、両チームともにどうみても投手が役者不足だった。
阪神の初戦の先発は今季未勝利の小嶋。当然のように序盤からジャイアンツ打線の餌食となり、地上派の中継が始まった頃彼は既にマウンドにいなかった。対するジャイアンツも今季は不振を極めるゴンザレスが先発。何とか5回を投げきった印象だった。第3戦に先発した朝井にしても、いくら"救世主"ともてはやされているとはいえパ・リーグ最下位の楽天で干されていた投手だ。この大一番で先発させる器ではないだろう。

かつてこの伝統の一戦では、首位攻防戦ともなればローテーションを崩してでも初戦にはエースをぶつけ合ったものだが、舞台の主役たる先発投手としては明らかに物足りない印象を受けた。
いくらクライマックスシリーズによって3位チームにまで挽回の可能性が残るとはいえ、舞台はリーグ優勝を決める天王山なのである。両チームともに先発のコマ不足は深刻だ。

ただ、そうした中の窮余の一策とはいえ、第二戦でタイガースが高卒新人の秋山拓己を先発させたのは、この三連戦ほとんど唯一の目を見張るシーンだった。伝統の一戦で高卒ルーキーが初登板初先発を飾るのは、ドラフト制開始以降初めてとのこと。本人の緊張たるや相当のものだったろう。

球速は140kmに満たなかったものの、伸びのある球筋がジャイアンツの重量級打線をてこずらせた。勝利投手の権利を得たまま5回を投げきったが、真弓監督が続投の判断を下したのが結果的には凶と出た。
しかし6回途中でKOされ、マウンドを下りた秋山がベンチでタオルに顔を埋めて涙を拭う光景には、すがすがしい感動を覚えたファンも多かったのではないか。プレーオフ制度が導入されて以来、かつての「10.19」や「10.8」のようなペナントレースの特定の一戦で必勝を期すような姿勢というのはなかなか見られない。ここで負けてもいずれ挽回が利くという心理がどこかで働くのだろう。

それでもルーキーにとって、プロ初登板は生涯で唯一の経験である。
昨年のドラフトでは、雄星ばかりが注目される状況を歯がゆい思いでみつめ、自身も1位指名を期待しながら、実際にはドラフト4位での指名という評価の低さに悔し涙を流した。「プロに入れば条件は一緒。自分が実力を見せるける番だ」そう誓ってプロ入りしたが、この試合の涙には、そんな背景も関係していたのかもしれない。

あとワンアウトが取れず勝利を逃した彼は、プロで勝つことの難しさを痛感しただろう。あと勝利までのあと一歩足りず大金星を逃した彼だが、これから歩んでいく道のりを考えれば、この試合で得たものはとてつもなく大きい。そんな19歳の未来は、果てしなく明るいのではないか。

※移動日(試合のない日)更新

※コメント欄でのご指摘を受け、言葉使いを訂正いたしました。誤用をお詫びすると共に、ご指摘に御礼申し上げます。(8/30:筆者注)

■筆者紹介
松元 たけし
野球観戦が生きがいで、二軍戦を中心に毎週末球場に足を運ぶ。
この3連戦ではいずれもチケットが取れず…それでもペナントレースが盛り上がるというのはいい気分ですね。

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「90年代野球にオマージュを」の言葉の元に集った野球語りたがりの"烏合の衆"。4名が交替制でコラムを執筆します。全員、松坂世代前後の生まれ。

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