精神科医の片田珠美氏が、最近の臨床現場で感じている3つの特徴を次のようの述べています。

1.ひきこもりの増加にみる打たれ弱さ
2.何でも他人のせいにして切り抜けようとする他責的傾向
3.覚せい剤や合成麻薬などにすがる依存の増加

 彼らの多くは、現実の自分を受け入れられないでいます。「こうありたい」という自己愛的なイメージ上の自分と、現実の自分との間のギャップが大きすぎるためだそうです。「自分は何でもできる存在である」といった幼児的な万能感をひきずりながら、実際には「それほどでもない」等身大の自分をなかなか受け止められないのだといいます。

 一方で、これまた増えているように見えるのが、クレーマーやモンスターペアレント、モンスターペイシェントなど、何でも他人のせいにしようとする大人。うまくいかなかったら、とりあえず他人を責めたてて切り抜けようとする他責的傾向はあらゆるところで強まっており、「一億総他責任社会」とも言えるほどだと片田氏は指摘しています。

 「打たれ弱さ」と「他責的傾向」。この一見相反する二つの根本にあるのは実は同じもの。いずれも、自己愛的イメージと自分のギャップを受け入れられないが故に出る徴候なんだそう。一方は他者との関わりを回避して自室に退却することで、他方は他者を責め立てることによって、自己愛的な万能感を守ろうとしています。

 そして、このギャップを乗り越えるためのもう一つの手段として、最近増えているのが依存症です。つまり、覚せい剤や合成麻薬の使用......。

 彼らに共通しているのは、理想と現実の落差を受け入れられず、薬物の力を借りてでも「あきらめ」を回避しようとする姿勢。いわば、「イメージ通りに能力を発揮できない」自分を直視することなく、手っ取り早く現実から逃避しようとする傾向が見られます。「自分はこうありたい」という自己愛的イメージをあきらめきれない反動です。

 マイケル・ジャクソンが睡眠薬や麻酔薬などに依存していたことは盛んに報道されていますが、彼も大ヒットを飛ばせなくなった、あるいは年齢によって昔のようには体を動かせず、声も出せなくなった。そんな現実を受け入れられないがゆえに、薬に頼ったのではないかと指摘する人もいます。

 アメリカン・ドリームを体現していたマイケルの死は、「あきらめきれない」という生き方には限界があることを、私たちに教えてくれたのかもしれません。



『一億総ガキ社会』
 著者:片田 珠美
 出版社:光文社
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