“ナンバーワンよりオンリーワン”を体現する動物って?

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 2010年8月、ある1冊の絵本が復刊されました。
 その名は『イルカの子―A Little Dolphin』(姫野ちとせ/著、主婦の友社/刊)。

 トールペイントによる優しいタッチで描かれた絵に添えられた文章で書かれているのは、とある兄妹のお話です。知的障害をもって生まれてきた妹と、純粋で真っ直ぐな妹を守ろうとする兄の絆が、兄の視点から優しい文体でつづられています。

 さて、本書の中で妹は「イルカの子」と呼ばれていて、こんな風に書かれています。


 イルカは なかまを たいせつに する
 やさしくて かしこい どうぶつだね



 イルカは仲間意識が強く、ほとんど喧嘩をしないと言われています。
 しかし、実際はどうなのでしょうか。そこで、イルカの「生態」を調べてみました。


●イルカは「自分」を認識できる数少ない動物
 人間は鏡に映った自分の姿を「自分」と認識できますよね。実はイルカは、人間やチンパンジーといった霊長類と同様に、鏡に映った自分を「自分」だと認識できる数少ない動物なのだそうです。(*1)イルカが「賢い」と言われるのは、そういった知能レベルの高さから来るものなのです。
(*1)『教育心理学年報』47, 勝俣悦子「イルカの子育てと自立」を参考

●イルカは嗅覚が退化し、聴覚に優れる
 イルカは超音波でコミュニケーションをとっているということを聞いたことはありませんか? これを「エコロケーション」というのですが、医学者の徳永叡氏がアラリイルカの脳を分析したところ、イルカは嗅覚が退化し、聴覚が発達していたそうです。特に聴覚については内耳神経が太く、その発達の程度はコウモリに似ていると指摘します。

●イルカは本当に仲間意識が強い?
 イルカは仲間意識が強いそうで、群れをつくって行動することが多い生き物です。しかし、「イルカの気持ち」というウェブサイトによれば、イルカはボスなどは作らず、人間の手で飼育される際も友達のようなスタンスを取るそうです。まさにナンバーワンよりもオンリーワンと言うべきでしょうか。イルカは好奇心旺盛と言われていますが、それでも1匹1匹性格が異なります。そういうところも人間から見て近く感じる理由なのかも知れませんね。

●イルカでもストレスは溜まります
 好奇心旺盛で、よく人に懐くイルカ。でも、動物ですからストレスも溜まりますし、機嫌が悪くなるときもあるそうです。例えばお腹が空いていたり、驚いたり、嫉妬しているときなどは、基本的には人間と同じように機嫌を損ねてしまいます。思いやりを持つこと、それがどの動物の世界でも大切なんですね。


 SNSサイト「mixi」の『イルカの子』のコミュニティをのぞいて見ると、「イルカの子」には「汚れを知らないイルカのような生き方を選んで生まれてきた子」という意味が込められていることが書かれています。
 好奇心旺盛で、仲間に優しく、もちろん機嫌が悪くなるときもあるけれど、さまざまな可能性を秘めているイルカ。「イルカの子」という表現は確かにピッタリきます。

 ところで、この『イルカの子―A Little Dolphin』、実は2005年に1度刊行されたものの、その後間もなく出版社が倒産し、絶版となってしまいます。しかし「mixi」のコミュニティや、ウェブ上のブログ、日記を中心に再版の声が根強くあがり、同じ母として心を打たれた編集者の強い想いにより、主婦の友社から、このほど、主婦の友社から再版されました。

 多くの人の感動や想いが詰まった一冊。是非読んで欲しいです。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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