■ 21節

J2の第21節。10勝4敗5分けで3位のジェフ千葉と8勝5敗6分けのサガン鳥栖の対戦。昇格圏内の千葉との勝ち点差が「5」の鳥栖としては勝って勝ち点差を「2」に縮めたい大事な試合である。

ホームの鳥栖は<4-2-3-1>。GK赤星。DF丹羽、木谷、呂成海、田中。MF朴庭秀、早坂、キム・ミヌ、藤田。FW豊田。佐賀大学のMF黒木が初スタメン。MFキム・ミヌは韓国の新しいA代表に選出されている。

対する千葉は<4-2-3-1>。GK櫛野。DF青木良、茶野、ミリガン、アレックス。MF工藤、佐藤勇、深井、倉田、谷澤。FWネット。MF谷澤は4試合目のスタメン出場。

■ 1対1のドロー

試合の立ち上がりはイーブンの展開。鳥栖は1トップのFW豊田にボールを集めて、FW豊田を起点に攻め込む。一方の千葉は2列目に並ぶ3人のアタッカーがドリブルで仕掛けてチャンスを作ろうとするが、なかなかうまくいかない。スコアレスのままで進んだ前半43分に千葉が先制する。右CKを獲得すると、MF谷澤のキックが鳥栖のDF木谷のオウンゴールを誘う。前半は1対0の千葉リードで終了。

後半は1点リードの千葉が主導権を握るが、ホームで無敗を続ける鳥栖が後半25分に同点に追い付く。右サイドからのクロスをMFキム・ミヌが折り返すと、走り込んだMF藤田が同点ゴールを決める。ルーキーのMF藤田は2試合連続ゴールでシーズン3ゴール目。

終盤に千葉はDFミリガンが2枚目のイエローカードで退場となるが、セットプレーで決定機を作ってあわやのチャンスを作るが決められず。結局、1対1のままで終了。両チームの差は「5」のままで変わらなかった。

■ 失速気味のジェフ

3位の千葉は20節の大分トリニータ戦で5対0と快勝したものの、ここ5試合では1勝1敗3分けと思うように勝ち点が伸ばせていない。昇格圏内はキープしたものの、1試合消化の少ないアビスパ福岡との勝ち点差が「3」となって後続チームに追い上げられてきている。

ボールはそれなりに回っているが、全体的に運動量が少なめなのが気がかりである。江尻監督が目指しているサッカーは運動量が「命」という部分があるが、あまり夏場の時期には向いていないサッカーであり、8月中の戦いをいかにして乗り切ることが出来るのか?正念場である。

■ ベターな中盤の構成は?

なかなか結果が出なくなってきた中で、中盤の5人に関しては試行錯誤を繰り返している。開幕からMF佐藤勇とMF工藤は絶対的存在なので、考えるべきは他の3選手をどう組み合わせるかという点であるが、この試合のようにMF深井、MF倉田、MF谷澤の3人のアタッカーを並べる布陣はあまり効果的とはいえなかった。

ベターなのは、やはり開幕から続けてきたアンカーを置く方法ではないだろうか?もちろん、MF山口あるいはMF中後のコンディションが上がってくることが前提であるが、このチームのキーマンであるMF工藤やMF佐藤勇をもっと攻撃に関与させることが出来るので、厚みのある攻撃が可能となる。

■ 貴重なドロー

勝てば千葉まで勝ち点「2」差に迫ることが出来た鳥栖は大一番という位置づけて試合に臨んだが、アンラッキーなオウンゴールで先制ゴールを許して試合運びが難しくなった。ただ、後半に追いつけたのは大きく、勝ち点差「2」にすることは出来なかったが、勝ち点差「8」に広げられることが無かったのは大きい。

試合が進むにつれて、オーストラリア代表DFミリガンと元日本代表のDF茶野というJ2トップレベルのセンターバックコンビの前に1トップのFW豊田が持ち味を発揮出来なくなっていったが、2列目のMF藤田が鮮やかな飛び出しから同点ゴールを奪った。

■ 5位につけるサガン?

ここ数年、毎年のように昇格レースに加わりながら、あと少しのところで昇格を逃してきたサガン鳥栖であるが、ここまで5位と今シーズンも好位置につけている。ただ、ここ数年の戦力の充実ぶりとは違っていて、今シーズンは「よくやっている」という部類に入る。

昨シーズン途中にJリーグの移籍制度が変わったが、もっとも影響を受けたのがサガン鳥栖であり、昨シーズンの主力はほとんどいなくなってしまった。もちろん移籍制度の変更だけの影響ではなく、もともとレンタルで加入していた選手も多かったが、昨シーズンの主力メンバーで言うと、FWハーフナー・マイク、FW廣瀬、MF高橋、MF高地、MF島田、MF武岡、DF柳沢、DF渡邉が他チームに移籍。中盤のレギュラー4人は総入れ替えで、この試合のスタメン11人のうち、昨シーズンもサガン鳥栖に所属していたのは昨シーズンはレギュラーではなかったGK赤星だけ。試合に出場した14人中13人が今シーズンからチームに加入した選手であり、メンバーだけを見るとどこチームのスタメンなのか、判断するのは難しいような状況である。

■ 5位につけるサガン?

もちろん「お金が無い」ため仕方の無い部分はある。が、以前からレンタル組に少し頼り過ぎていた面があって、昨オフも得点源だったFWハーフナー・マイクとチャンスメーカーのMF島田のレンタル組の二人がそろって退団。今シーズンはもろにその影響を受けてしまった。

「育てて売る」というスタイルを実践しているチームであるが、ここ数年間は、FW新居辰基、FW藤田祥史、MF高橋義希というチームの顔的な存在でありJ2を代表するプレーヤーをかかえていたが、今のチームはまだ発展途上であり、そのクラスの選手はいない。新体制となった韓国A代表にも選出されたMFキム・ミヌという可能性を感じさせるスター候補がいることはいるが、チーム全体のことだけでなく、各選手をも愛しているサポーターにとって、これだけ入れ替わりが激しいとちょっとつらいものであり、クラブも考えなくてはならない。

■ 5位につけるサガン?

チームの戦力値としては2006年以降では一番下のレベルであり、成熟度もまだまだなサガン鳥栖であるが、ただ、それでも5位につけているというのは立派なものである。まったくゼロに近い状態からチームを作り上げてきた松本育夫監督とユン・ジョンファンコーチの手腕は高く評価出来るものがある。

もちろん、最大の目標である「昇格」に向けて、今後まだまだ激しい戦いが続いていくが、このチームは大きな強みがある。

メンバー表だけを見ると、どこチームのメンバー表なのかよく分からないイレブンだが、ピッチ上に立つと、はっきりと彼らが「サガン鳥栖のイレブン」だということはよく分かる。「チーム全体で最後まであきらめずに粘り強く戦い続けるスタイル」はメンバーがほとんど入れ変わっても、サガン鳥栖というチームには根付いている。これは本当に大きな武器であり、「5位」という高い順位につけている理由でもある。