【名盤クロニクル】強烈な異文化競演 シェイハ・レミッティ「Sidi Mansour」
(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ワールドミュージック/ロック)

シェイハ・レミッティは、アルジェリアの大衆歌謡にルーツを持つライという音楽のゴッドマザーと呼ばれた歌手である。2004年には来日公演も果たしており、その強烈な個性に魂を奪われた人も多いだろう。

ロックシーンからもライは注目を受けると同時に、ライの側でも西洋音楽との邂逅を行い、今回紹介するアルバム「Sidi Mansour」は、ロックシーンでも強烈な個性を持つギタリスト、ロバート・フリップと競演した作品である。

レミッティの音楽とフリップの音楽は、ともに一般的なポピュラーミュージックで多用される音階ペンタトニックスケールを避けているという点では一致している。

しかしながら、本作ではレミッティの歌うアラブ的な音階と、フリップの変速チューニングを使った独自音階が、見事なまでに調和して「いない」。

世間では何であれ調和することが良いとされるが、調和しないことで生まれる美というものも存在する。
現代的な意味での不協和音もその一つであるが、このアルバムでは、互いの音楽世界を主張し合って一歩も譲らないことで、非常に刺激的な音楽を生み出している。

なお、他の参加アーティストとしては、フランク・ザッパ・バンドの重鎮だったブルース&トム・ファウラーが参加しており、変態度が高まっていると言えよう。

本作とは反対に、ライという音楽を自分の個性として取り込んでしまったのが、スティングの90年代のヒット曲「デザート・ローズ」である。聴き比べて見ると面白い。

一風変わった音楽をお好みの方にオススメの1枚である。

なお、音盤は現在入手が困難であるが、Amazon.frでは本作を始めとしてかなり豊富なレミッティの音源(音盤とMP3)が入手できる。

(収録曲)
1. Nghani Ki Ma Nabghi
2. Sidi Mansour
3. Ha Rai Ha Rai
4. Rah Jey
5. Rouked el Achra
6. Maheyni Maheyni
7. Rah Yabki
8. Serrer A Droite Et Stationner
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)

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