今年は中島らもが亡くなって、7回忌になるのだそうだ。それに合わせてというわけではないだろうが、娘の中島さなえが作家としてデビューした。3作の短編で構成された『いちにち8ミリの。』は童話のような、寓話のような物語。この不思議な読み心地は、間違いなく父親からのDNAを受け継いでいる。

 家の敷地にある大木に住み着いてしまった少年を描いた『ゴリづらの木』、遠いご先祖さまの敵討ちに奔走する現代に生きる忍者の話は『手裏剣ゴーラウンド』。表題作『いちにち8ミリの。』は飼い主を愛してしまったサルと一日8ミリだけ動いて、好きな人の傍に居たいと願っている石の物語。どの話も甘く切なくほろ苦い。

 言葉の選び方や比喩は彼女独特のもので、心地いいリズム感を持つ文章は、これから何を書いていくのだろうと期待させる。楽しみな作家が出てきた。

(東えりか)







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