大手出版社リストラ劇の舞台裏とは

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 世の中の景気は少しずつ上向いているというが、それでも歯止めがきかない業界もある。
 出版業界は出版不況の上に「電子書籍」の登場という課題も上乗せされ、激動の毎日が続いているが、そんな最中の今年春先、1つのブログがウェブ上でにわかに話題になった。

 新潮社から出版された『リストラなう!』は、「たぬきちのリストラなう!日記」というブログを書籍化したもの。ある大手出版社の「早期退職優遇措置」を巡る日々が、半ば出版業界の内情を暴露する形でつづられている。
 本書の著者は綿貫智人(わたぬき・ちじん)名義だが、これは「たぬきちのリストラなう!日記」の管理人である「たぬきち」と人々の輪という意味の架空の名前だという。

 「早期退職優遇措置」とはいわばリストラのこと。本書ではリストラによって去る者と残る者の間で浮き彫りになる葛藤や、心の動き、社会の変わりゆく雰囲気、そして“電子書籍”に対する出版業界の焦りなどが如実に浮かび上がる。

 また、たぬきちさん自身の月収や賞与額まで公表するあたり、相当の覚悟を持って書いていることがうかがえるその一方で、たぬきちさんの姿勢に対する批判のコメントも多数掲載されており、そのやりとりがまた面白いのだ。

 本書は出版業界の人間でなくても、「リストラが始まると会社自体がこういう雰囲気になるのね」ということがうかがえて参考になる、また、本好きな人にとってみれば、出版業界が抱えている課題や問題がたぬきちさんとコメントの2者から浮かび上がり、興味深く読むことができるだろう。

 たぬきちさんは現在45歳。
 第二の人生をどう歩むかはまだ分からないが、この時点で彼が出版業界に一石を投じた意味は大きいのではないか。賛否両論はあるが、出版業界関係者から出版業界を目指す人まで、様々な人に一読して欲しい一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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