ゴルゴ13・さいとう氏の素顔(3)

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 前回、前々回と、自伝『俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代』(新潮社/刊)を刊行したさいとう・たかを氏に劇画人生や仕事論を語っていただいたが、今回は同氏の趣味であるという映画や今後の野望についてお話を伺った。
 『ゴルゴ13』『鬼平犯科帳』など、数々の名作を世に出し続ける巨匠へのインタビュー、最終回!

◇ ◇ ◇

■「同世代の漫画家はみんな逝ってしまった。だからこそどこまでやれるかやってみたい」
―今映画のお話が出ましたが、さいとう先生は大変な映画マニアとして知られています。最近公開された映画で良かったものはありますか?

さいとう「最近観た作品だと『十三人の刺客』のリメイク。久しぶりに邦画で骨のある作品を見せてもらいましたね。」

―洋画がお好きなのだと思っていましたが、邦画もご観になるんですね。

さいとう「洋画も邦画も両方好きですよ。でも邦画は締め出されたんですね。」

―といいますと?

さいとう「観たいと思うものがなくなってしまったということです。『十三人の刺客』はリメイクものなんですが、リメイク前のものを観た時に、これは東映は面白いものを作ったなと思ってその後に期待していたんですよ。そうしたらその後はヤクザものに走ってしまった。それで映画館に行かなくなってしまったんです。
当時、私はホラー映画を作れとやいのやいの言っていましてね。なぜかというと、ホラー映画ほど安く作れて面白いものはない。だから『エクソシスト』が出た時は悔しかったですね。こんなもの外国に作られてどうすんだ、って。ホラーのネタなんて外国より日本の方が絶対多いじゃないですか。それに狼男より猫女の方が恐いですよ。それを無視してヤクザものに走ってしまい、私のような映画マニアは映画館から締め出されてしまった、と」

―さいとう先生の作品も過去に3作ほど映画化されていますね。それに関しては否定的な意見をお持ちみたいですが…。

さいとう「否定的というよりは、私らの描いているものを映画にすべきじゃないと思っています。私らの作品の面白さは映画の面白さとは別ですから。
私が映画を撮るなら絶対私が描いているような作品は映画にしません。自分の作品を映画化したことを後悔はしていませんが、“どうせロクなものができないだろう”と思っていましたね」

―さいとう先生の劇画に描かれているキャラクターの性格についてなのですが、英雄と悪役でどちらが描きやすいというのはあるのでしょうか。

さいとう「キャラクターの性格というか、主人公は描きにくいというのがありますね。主人公は極力多くの人に好かれるような顔を書かなきゃいけないわけで、これは至難の業ですよ。試行錯誤を重ねて描いていくわけですけど、楽しくないですね」

―男性と女性では書きやすさに違いはありますか?

さいとう「それは強烈にありますね。本質的には男に女は描けないと思っています。男より女の方が生物として上の位置にいると私は思っています。女でいる限りは男と同じ位置かもしれませんけど、子供を産んで母親になった時から、男よりも上の位置に行ってしまうんですね」

―さいとう先生の人生に影響を与えた本がありましたら紹介していただけませんか。

さいとう「一番大きかったのは手塚治虫さんの『新宝島』でした。これは絶対面白い世界になるなと思いました。あとは小学生の時に読んだ川端康成の『雪国』も感動しましたね」

―最後になりますが、さいとう先生の今後の目標・野望等がありましたら教えてください。

さいとう「この歳で野望なんてないでしょう(笑)でも敢えて言うなら、どこまでやれるかやってやろう、ということですね。漫画・劇画界で私と同世代の人間はみんな逝ってしまいました。もうほとんどいないですよ。だからどこまでやれるかやってやれという、意地のような気持ちはあります」

(第1回 『ゴルゴ13』休載のピンチは何度もあった? を読む)
(第2回 「分業制を始めた当初は誰も相手にしてくれなかった」を読む)

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