問題作か? 有名評論家35人による『村上春樹『1Q84』をどう読むか』

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 2009年5月末、村上春樹『1Q84』(新潮社)が発売され、BOOK1、BOOK2合わせて200万部を超えるベストセラーとなった。出版不況もどこ吹く風といったメガヒットである。このヒットを受けて、10年4月、続編『1Q84 BOOK3』が上梓された。世界で450万部を売り上げた『ノルウェイの森』から23年。"ノーベル賞に一番近い日本人作家"村上春樹は、売り上げも、その文名も、まだまだ留まることを知らないようだ。

 『1Q84』は、美しき暗殺者・青豆と小説家志望の青年・天吾のストーリーが、1章ごとに交代で展開されていく。青豆は宗教団体「さきがけ」の教祖暗殺を依頼され、天吾はふかえりという女の子の書いた「空気さなぎ」という小説のリライトを行う。ふかえりは「さきがけ」教祖の娘で、青豆と天吾の物語は急速に接近していく。

 筋自体は難しい小説ではないが、多くのメタファー(暗喩)が散りばめられていて、謎があるように思わせる。『村上春樹『1Q84』をどう読むか』(河出書房新社)は、今をときめく有名評論家35人が『1Q84』の謎に挑んだ評論集だ。巻末には「『1Q84』をめぐるカルチャー・キーワード84」も付いていて、本編の読解に役立つ。

 この評論家の顔ぶれがすごい。安藤礼二、石原千秋、内田樹、島田裕巳、永江朗、森達也、四方田犬彦......他、『文学賞メッタ斬り』の大森望×豊崎由美と、さながら評論家のオールスターといったところ。賞賛する者、批判する者、主張に違いあれど、少なからず『1Q84』に興味をひかれる様子。「この人はハルキが嫌いなんだな」「骨の髄までハルキファンだな」と、各評論家の好き嫌い、文学的スタンスが分かって面白い。中立を装って実は批判している、褒めているように見せて最後に辛らつな言葉を浴びせる、という評論家のテクニックが憎らしい。
 
 ここで肯定派か否定派かというのはあまり重要ではない。この本は、ひとつの作品に対し、35人の評論家たちが自分の技を見せ合う読み比べ合戦なのだ。各論を読み比べて、個人採点すると、また違った楽しみ方が出来るのではないだろうか。きっと、自分のセンスに合う評論家が一人は見つかるはずだ。
(文=平野遼)



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