ゴルゴ13・さいとう氏の素顔(2)

写真拡大

 数々のヒット作を世に送り出してきたさいとう・たかを氏だが、同氏の大きな功績のひとつに“漫画界に本格的に分業制を導入した”というものがある。
 導入を開始した当初は異端扱いをされ、まったく相手にしてもらえなかったそうだが…さいとう氏本人はそんな状況をどう思っていたのだろうか?また、今でこそ定着した感のある分業制だが、分業には分業の苦労もあるようで…。
 今回もさいとう氏の自伝『俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代』(新潮社/刊)の内容を踏まえて、お話を伺った。

◇ ◇ ◇

■「分業制を始めた当初は誰も相手にしてくれなかった」
―さいとう先生は漫画に本格的に分業制を導入したことで有名ですけども、始めた当時は分業という体制を批判する人が多かったわけですよね?

さいとう「批判どころじゃなかったですよ。異端児もいいとこでいくら説得してもダメでしたね。私らはドラマを作っているわけでしょう。ドラマを作る才能と絵を書く才能は全く別物なのに、漫画家はそれらを兼ね備えていなければならなかった。でもより多くの才能を集めれば、より完成度の高い作品ができるはずです。それを一生懸命説いたんですけど、当時は相手にしてもらえなかったですね」

―さいとうプロダクションの現体制は脚本部・構成部・演出部ですか?

さいとう「脚本部はなくなりました。なぜかというと、私はこの組織に核分裂を起こしていきたかったんですよ。核になる人間をまず何人か養成してその周りにスタッフを置く。ところが核になれる人間はみんな辞めて独立してしまうんですね。
私はこの業界に入ってくる人間は、みんな私のように悩んでいると思っていたんですよ。ところが実際はみんな“我こそ天才”と思っている。それが私の一番の勘違いだったんですね。だからこの計画はそもそも無理があったということで、結局は“さいとう・たかをのさいとうプロ”でしかなくなってしまった。
そういった状態で脚本部を抱えると脚本を書いている人が、私の描きやすいもの、好みそうなものを書こうとするんですね。そうなってくると私が挑戦するものがなくなるでしょう。私としては自分が苦手なものを持ってきてくれたほうが挑戦する感覚になるんですね。例えば『ゴルゴ13』の世界は私が一番苦手な世界でした。それが40何年も続いてしまったのは不思議ですが」

―『ゴルゴ13』に欠かせない国際情勢にあまり詳しくないということでしょうか。

さいとう「いや、国際情勢というよりは機械ですね。国際情勢は面白くて好きですよ。余談ですが、私は新聞では一面が一番好きなんです。一面は“誰それが何をした、どこに行った”ということだけが書いてあるでしょう。それを読むといろんなことが想像できて面白いんですけど、三面は細かく書かれてすぎているから面白くないんですよね。
そんなわけで国際情勢は好きなんですが、機械が出てくるとね…コンピュータなんて何が何やらさっぱりですよ。電気のソケットも直せない人間ですからね」

―さいとうプロの分業制について改めてお尋ねしますが、例えば『ゴルゴ13』を一話仕上げるのに何人くらいのスタッフが関わっているのでしょうか。

さいとう「今は8人ですね。脚本は外注で脚本家とは極力会わないようにしています。あまり脚本家と会っているとなあなあになってくるんですよね。会っていないと私の好みや得意不得意がわからないからいろんな作品が出てくるんです。もっとひどいのは締切りギリギリ出しよるんですよ、そうすれば書き直させられなくて済むと思って(笑)」

―(笑)なるほど

さいとう「それがまずくなってきたんで脚本部を閉じて外注にしたんですね」

―先ほどおっしゃっていたように、それぞれの異なった才能を束ねて完成度の高い作品を作れるというのが分業制のメリットかと思いますが、分業制のデメリットがあるとしたらどんな点だとお考えですか?

さいとう「それぞれの才能をまとめる難しさですね。役者(キャラクター)はみんな言うことを聞いてくれますから映画をつくるほど難しくはないですが。『ゴルゴ13』のことでよく、連載開始から40年も経つと、ゴルゴは私の分身みたいな存在になったのではないかと聞かれますけど、そうじゃなくて役者と監督の関係ですね。映画だとそうはいかないでしょう、大変だと思いますよ」

(第1回 『ゴルゴ13』休載のピンチは何度もあった? を読む)
(第3回 「同世代の漫画家はみんな逝ってしまった。だからこそどこまでやれるかやってみたい」につづく)

【関連記事】 元記事はこちら
“劇画の父”さいとう・たかを氏の言葉から「プロの仕事」を学ぶ(1)
“ゴルゴ13”生みの親、さいとう・たかをの自伝が発売
漫画家の佐藤秀峰氏が『新ブラックジャックによろしく』をウェブサイト上で配信 出版不況下での新しい創作活動を実験

【新刊JP注目コンテンツ】
満足の先に感動はない、
そこにあるのは大満足だけである。

中谷彰宏の言葉のベストアルバムだ!