高所得転職者の入社前調査 〜その知られざる実態〜 第8話
入社志望者の借金は? 素行は? 経歴は本当?
などなど、採用企業が本気でお金をかければ調べられないことはありません。

高額所得者を雇うからこそ、志望者への調査は仔細に渡ります。調査の現場では、果たして何を調べられているのでしょうか?その方法とは一体どのようなものでしょうか?

本シリーズでは、実際にあった入社前調査の実例を、現役探偵が語ります。


■通院先・服用薬までなら調査は可能

冷徹な採用担当者でも依頼に二の足を踏む調査というものがあります。それは「病気」に関すること。「人を身体的欠陥や病気で差別してはいけません」というのは「人として」当然持っていなければいけない道徳観ですが、「採用担当者として」は捨てた方がいい考え方です。

なるべく誰も傷つけない例で申し上げれば、「メタボ健診で引っ掛かった体重200kgの人間」を、誰が好き好んで採用するでしょうか。水槽で腹を上にしてプカプカ浮いている熱帯魚を好んで買うアクアリストが居ないように、人間も健康体であることが選ばれるため重要な要素となるのです。

となれば当然、応募者は「健康状態は良好です」と持病や既往歴を隠し、採用担当者はそれを暴こうとするもの。そこで探偵に依頼がくるわけですが、そのものズバリの病名や病状に関しては調べることが出来ません。医療関係者は患者に関する話をうっかり喋ると刑法罰である秘密漏示罪になるので、想像以上に口が堅いのです。社会的な地位が高い資格所有者ほど、失うものの大きさからか、口の堅さも比例していきます。

そこでこの依頼に対しては、応募者がどこに通院しているか、何の薬を服用しているか、までを調査したものを結果として報告します。


■基本となる二つのアプローチ

詳細を申し上げることはできませんが、とある方法により医療費明細のコピーが入手できたりします。年に1回ぐらい送られてくる、自分がどこの医者に行ったかという履歴が一覧で判る書類です。ただ、この方法には強力なコネとお金と偶然性が必要になります。

もう一つのやり方は「朝から応募者の自宅周辺の病院に電話をかけまくる」という、至ってシンプルなもの。「あの〜、そちらに通院しています○○(応募者の名前)ですが、前回処方せん貰った薬って何でしたっけ?」と電話します。

仮に応募者が通院していなければ、向こうの対応も不審者に対するものに変わりますが、そんなものは「勘違いでした」でいくらでもごまかせます。午前中の医療現場というのはたいてい火が出るような忙しさですので、そんな電話一本に対していちいち事を荒立てようとはしません。ビンゴだった場合の本人確認も、生年月日や住所など、履歴書に書いてある程度のことを訊かれるだけですから、性別さえ同じならいくらでも成りすませるのです。


■それでも駄目なら・・・

この調査が空振りに終わった場合どうするか。次はゴミを漁ります。

応募者の自宅エリアのゴミ収集日、早朝に出向いて応募者が出したゴミを袋ごと持っていきます。余談ですが、ゴミというものは路上に捨てた瞬間に所有権が放棄されます。

拾ってきたゴミはぶちまけて中身を確認するため、毎回実行する場所を決めるのに苦労しますが、中からレシートやカード類の明細が出てきたりしますので、そこから必要な情報だけを抽出しておきます。仮に給与明細やサラ金の督促状などから勤怠や金銭面に問題があることが判明しても、依頼者には黙っておきます。探偵は報酬を貰っていない情報は一切教えないものなのです。

ゴミの中から薬の包みを見つけたらそこで調査終了です。同居人のものかもしれないというリスクはありますが、ここからさらに調査を続行するかどうかは依頼者の懐具合によります。

探偵が転職者の調査でゴミを漁るのはそんなに珍しいことではなく、今まで紹介した調査の中でも実行されることがあります。それぐらい簡単に個人情報を拾いまくれるので、ゴミを称して「宝の山」と笑いながら手袋とマスク姿で作業する探偵は、それこそ掃いて捨てるほどいます。

金銭や個人情報絡みの書類はそもそも捨てないこと。そして薬に関するゴミは、出先のコンビニや駅で捨ててしまいましょう。

■著者プロフィール
木島球六(きじま・きゅうろく)(仮名)
大学卒業後、某酒造系メーカーに就職。営業マンとしてそこそこの実績をあげていたが、だいぶ仕事に飽き始めていたところ、ある日ポストに入っていた「探偵募集」のチラシが目に入る。興味本位で探偵事務所を訪問してから早10年。今では事務所で一番のベテランとなっている。年間250本の調査依頼をこなす傍ら、採用責任者として年間50人以上の探偵志望者の面接も行っている。



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