歴史上、数々の支配者たちに熟読されてきた兵法書の古典『孫子』。人間心理の深い洞察をもとに必勝の理を説いた同書を、視点をひっくりかえして読んでみたら何が見えるのでしょうか。

 『孫子』のなかからこれぞという言葉を選び、八方破れの無手勝流でもって解釈しながらその真意を探るのが、弘前大学教育学部教授・山田史生氏の著書「下から目線で読む『孫子』」。

 郷導を用いざるものは、地の利を得ること能わず。
 不用郷導者、不能得地利。
 (意味:土地にくわしい案内役がいないと、せっかくの地の利を活かせない)

 山田氏は言います。クリエイティブな人間ほど、うまいやり方を見たら率直にマネをするもの。既存のアイデアをうまく組み合わせて、はじめてオリジナリティは生まれてくることをクリエイティブな人間は知っていると。

 例えば、自分はそれを知らず、相手が知っているなら、相手に教えてもらうしかありません。そんな時、自分はバカではないと自惚れる人間はバカになれません。バカにかぎって「バカにされたくない」と思い、知ったかぶりしてしまうのです。しかし、知らないくせに知ったかぶりをするのは一番のバカ。知っているのに知らないふりをするほうが、うんと賢いのです。くだらないプライドを捨ててバカになれる人間こそがもっとも賢いといえます。
 
 誰かに何かを教えてもらったときに「そんなこと知っているよ」なんていうのは最悪です。そういう人には、誰もなにも教えてくれなくなります。例え知っていても「教えてくれてありがとう!」というほうが格段に賢い。教えてくれたことを素直に感謝すれば良いのです。

 上に立つ者にバカが多いのは、下の者が自然に意見をいいたくなるような雰囲気をつくることが難しいから。偉そうに「おい、なにかアドバイスしてみろ」といっても、なにもいってもらえないもの。目下の者に「あぁ、なにか意見をいってあげたいなぁ」と思わせるような人格者であることが、上に立つ者のつとめなのではないでしょうか。

 やはり、「土地にくわしい案内役がいないと、せっかくの地の利を活かせない」のです。

 
 ※同書は山田氏が独自の流儀で孫子の言葉を意訳しています。かならずしも学問的な正確さはありませんので悪しからず。



『下から目線で読む『孫子』』
 著者:山田 史生
 出版社:筑摩書房
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