昭和が終わってもう22年も経つのかと、ちょっと感慨にふけってしまった。加藤元『流転の薔薇』(講談社)は、懐かしい思いが胸を過ぎる小説である。
 大正時代、東京市の色街に生まれたチヅルは、9歳で富豪の実の父親に引き取られ萩生千鶴と名前を変えた。異母兄弟との確執はあったが美しい妹、鈴子との友情を育んでいた。しかし、ひょんなことから女優の道が開ける。 
 時代は無声映画からトーキーに代わるころ、様々な男を踏み台にして、千鶴は大女優になっていく。楚々とした風情から『銀幕の花嫁』と呼ばれるが、その仮面の下には貪欲で計算高い素顔が隠れていた。
 昭和の映画スターを彷彿とさせる人物が数多く登場し、女性の武器を最大限に使って、のし上がっていく姿は鬼気迫る。この時代、美しさはそれだけで財産だった。昭和を生き抜いた女の根性の物語である。それにしても、この濃厚な世界を書き下ろしで発表した新人作家、加藤元の根性もたいしたものだと思う。

(東えりか)







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