ゴスペラーズ(撮影:野原誠治)
 総作品数5,000曲以上、シングル総売上枚数6,821万枚(日本歴代1位、オリコン調べ)を記録し、2007年8月に惜しまれながらこの世を去った作詞家・阿久悠氏。翌2008年には彼のトリビュートアルバムシリーズ「歌鬼(gaki)」が発売され、レコード大賞企画賞を受賞。7月14日に発売を控えるシリーズ第3弾では、8組の実力派アーティスト達が一切の楽器を使わず、ア・カペラ&コーラスアレンジで時代を彩った昭和の名曲に挑み、阿久悠氏作詞による未発表曲「泣き方を知らなかった」も収録。発売に先立ち、同シリーズに参加したゴスペラーズに話を聞いた。

――今回、阿久悠さんの作品の中から「あの鐘を鳴らすのはあなた」と「さらば涙と言おう」の2曲を歌われることになったのは、どのような経緯からですか?

村上てつや(以降、村上):すごくゴスペラーズ的な話になっちゃうんですけど、ちょうどこの話を頂いた時期が活動を3ヶ月ほど休んでいる時期だったので、本来こういう決め方はあり得ないんですけど、メンバーに相談している時間が無くて、僕の方でもう話を受けて。もちろん今まで阿久先生の作品集は持っていたのですが、改めてホームページに行って全部プリントアウトして。どういう曲があったか、俺がどれぐらい知っているかをチェックする時間を作って。本当は岩崎宏美さんの曲とかも行きたかったんですけど、さすがにゴスペラーズ流に出来る自信が無かったので(笑)。「この作品だったら僕ら流に仕上げられると思います!」という自信があり、かつポピュラリティも意識しつつ、自分達が好きな曲を6曲ピックアップして。「多分、これをやれと言われるかな?と」思っていた2曲をお願いされた感じですね。

――ゴスペラーズとしてカバーをする際に、メンバーの皆さんでどのようなお話し合いをされるんですか?

村上:基本的にはメンバーに任せます。一人の考えだけで行った方がいい場合もあれば、みんなで合議して盛り合わせていくのがいい時もあれば、どちらの場合も色々あるんですけどね。今回に関しては「さらば涙と言おう」は北山が、「あの鐘を鳴らすのはあなた」は俺が中心になって。別の曲でも参加しているトライトーンというアカペラグループが、大学時代からの仲間なんですけど、リーダーの多胡ちゃんに協力してもらいました。

北山陽一(以降、北山):僕は5年前に多胡ちゃんとユニットを組んでいた経緯もあって、ユニットでアレンジをさせてもらったんですけど、すごく楽しかったですね。

――2曲とも以前から好きだった曲とのことですが、今回レコーディングしてみて改めて発見したことなどはありましたか?

安岡 優(以降、安岡):やっぱり言葉遣いなど昔の曲だということは分かっているのですが、自分の口で歌ってみた時に、この言葉が古臭くなく、心にフィットして歌えるというのが、改めて長く愛される名曲なんだなと思いましたね。

黒沢 薫(以降、黒沢):どの世代の人がどのタイミングで、例えば「さらば涙と言おう」は高校生の気持ちって絶対にあるものだったりするし。「あの鐘を鳴らすのはあなた」は本当に今から30年後に歌っても、同じように響く歌だと思うんですよね。それをアカペラという声で全部表現することによって、薄くもなるし、濃くもなるんですけど。“濃すぎない濃さ”みたいな詞の持っている強さは、上手くイメージできるように歌えたかなと思いますね。