『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅賞作家となった梯久美子。一貫して太平洋戦争を取材した作品を世に送り出している。新刊『昭和二十年夏、女たちの戦争』(角川書店)は、昨年上梓された俳優や建築家などの戦争体験を綴った『昭和二十年夏、僕は兵士だった』と対になる作品である。終戦の日、兵士たちは青春真っ只中を戦闘の最前線で迎え、女たちは銃後に控え、民間人としてそれぞれの地で玉音放送を聞いた。
 インタビューした人たちは各界の著名人である。作家・近藤富枝、生活評論家・吉沢久子、女優・赤木春恵、元国連難民高等弁務官・緒方貞子、そして女性問題評論家・吉武輝子。当時彼女らは10代から20代の独身で、外に向かってエネルギーを発散していた年頃であった。美しいものに興味をもち、箸が転んでも笑い転げていたその目に写っていた現実はどんなものであっただろう?80歳、90歳を越えてなお、毅然としたその様子には、深く首を垂れて聞くべき事が、まだたくさん残っていると強く感じた一冊である。
(東えりか)







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