W杯一次リーグで敗退し早々に帰国したフランス代表。これまで「すべてを明らかにする」と語っていた主将エヴラをはじめ、アビダルやアンリがマスコミのインタビューに応じたが、結局のところ核心を突いたコメントが得られず、“内紛”の真相は判然としないままだ。

 ところがここへ来て、もっと率直に語った選手が現れた。前述の3人同様、チームの“幹部”とされるウィリアム・ギャラスだ。レキップ紙が7日、翌日発売のレザンロキュプティブル誌からインタビューを引用して報じた。ちなみに同誌はフランスを代表する音楽誌で、スポーツ選手のインタビューが掲載されるのは異例のことだ。

 インタビューでギャラスは「ドメネクは選手たちに“エゴを捨てろ”と言ったが、彼自身がそれを忘れていたのだと思う。代表に失態があったとすれば、原因がある。隠すべきじゃないと思うから言うが、原因は監督から来ている」とドメネク前監督を徹底的に批判している。

 「真の問題は監督だ。自分もよくなかったし、チームもよくなかった。しかし監督だってよくなかった」というギャラス。戦術面でワントップにこだわったことが間違いのひとつと指摘するが、それ以前に「練習すらレベルに達していなかった」と嘆く。

 「世界最高の選手たちがいたとしても、必要とされる能力のある監督がいなかったら、結果なんて出せやしない」と厳しい評価を下すギャラスにすれば、アネルカが控え室で監督を罵倒したのも「数週間つづいたウンザリ感の結果として当然」となる。

 ギャラスがドメネク氏を批判するのは、監督としての手腕だけにとどまらない。これまで何度も批判されてきた「コミュニケーション能力」も標的となった。「この問題は深刻だった。ドメネクはオープンじゃなかった。多くの選手が彼とは口をきかなかった。自分もそのひとりだ」と明かす。

 一方で、報じられた選手間の不仲については、「雰囲気はよかった」と打ち消した。“幹部”数名が“グルキュフ外し”を画策したとの噂も否定する。6月20日の練習ボイコットに関しては、選手たちがアネルカの暴言について謝罪を表明しようとしたが、その機会を奪われたと主張している。

 ギャラスがドメネク前監督に抱く思いには、スタメンを外れたアンリに代わって主将を任せられなかったことが影響しているのもたしかだ。ギャラスが辛さを感じたのは、主将がエヴラになったことよりも、そのプロセスにあった。ギャラスは強化試合のコスタリカ戦を前に控え室に入ったとき、エヴラが主将の腕章を巻いているのを見て、はじめてこのことを知った。さらに監督からは「どうせお前はいい主将になれないだろう」という冷たい言葉を浴びせられたという。

 ギャラスがすでに監督の座を追われたドメネク氏ひとりに今回の不祥事の責任を負わせた、とする見方もできなくはないが、同時にどの発言もこれまでのドメネク氏の言動からすれば意外感は少ない。あとは、帰国後から現在に至るまでいっさい釈明を行なっていない前監督自身の発言が待たれる。